くらし

【紫原明子のお悩み相談】何回か関係を持った後終わらせた相手に、仕事で避けられ困っています。

『家族無計画』や『りこんのこども』などの著書があるエッセイストの紫原明子さんが読者のお悩みに答える連載。今回は職場のややこじれた関係についての相談です。

<お悩み>
こんばんは。酒の勢いで悩み相談を書いています。
去年、なんとなく体の関係を持った人がいました。私もその人も既婚子供ありです。 仕事絡みの付き合いで、数年くらい前から知っていた彼となし崩し的に関係を持ってしまいました。 数回関係してから、やめようということになり、相手からは、体の関係をなくしても仕事ではお互いにいい関係を続けたいと言われました。
私も割り切って、そのあとは以前と変わらぬように仕事の連絡をしたりしてますが、相手が態度を変えてきていて、とにかく接点を持ちたくないような感じです。
割り切って普通に対応した私の態度がダメだったのか。仕事をきちんとしていきたい私としては、仕事に影響を及ぼしてしまいかなり困りました。 一度こういうことがあると、仕事でいい関係に戻るのは無理なのかなと思ってますが、相手は嫌々ながらも連絡してきていて、こちらはどうしたら良いのかわからなくなりました。 (相談者:ねむっこ/女性/40代既婚者。子持ちです。)

紫原明子さんの回答

ねむっこさん、こんにちは。そしてお疲れさまです。大変なことになってしまいましたねえ。恐らく彼は、とても繊細な人だったんでしょう。そもそもねむっこさんに関係をやめたいと切り出したのだって、後ろめたい関係につきものの罪悪感とか、恐れとか、不安とか、そういったものを彼自身が抱えきれなくなったせいなのでしょうが、関係をやめたところでやっぱり、一度でも過ちを犯した自分から自由になれず、ねむっこさんが目の前にいる限り、いたたまれない気持ちになるのかもしれません。

ねむっこさんは彼に「普通に」対応していると仰っているけれども、この「普通」かどうかの判断はそれぞれの主観によるので、仕事上で交わされる何気ない会話の中に、彼が勝手に「普通」以上のメッセージを感じ取っている可能性もなきにしもあらずです。言葉尻とか、視線とか、隣り合って立つときの距離感とか、そのあたりに彼が勝手に、未だねっとりとしたものを感じて、勝手に恐れて、勝手に避けているかもしれません。

あるいは、ねむっこさんの思う「普通」自体も、無自覚に変化している可能性があります。というより、やはりどうしたって関係を持つと変わらざるを得ないですよね。以前、行きつけのバーのマスターが言ってました。店に二人でやってくる男女、男「何飲みますか?」女「○○さんと同じもので」とオーダーしている間はプラトニック。しかしときが経ちそんな二人が、男「何飲みます?」女「私スパークリング」になったら、大方関係性を持っている、と。……ほんとかよ〜!と半分笑って聞いていただきつつ、でもちょっとだけわかる気もしませんか。セックスをするしないというのは大なり小なり二人の関係性を変えるし、関係性の変化というのは無自覚な場所に現れる。

つまり、そんな中でねむっこさんと彼は「普通」を“装う”ことに挑んでいるわけですが、ねむっこさんが気づかないうちに表出させている微妙な変化を、彼の方がその何倍にも大きく、深刻に受け止めて、やはり勝手に恐れを抱いているのかもしれません。もしくは彼自身が、普通を装うことそのものの面倒くささに耐えきれないのかもしれません。

いずれの場合にしても、仕事仲間に戻った以上は、彼のナイーブさにいちいち手出ししてあげるわけにはいきません。本当にねむっこさんが普通に接しているのであれば、彼は遅かれ早かれ、自分が恥ずかしい独り相撲をとっていたことに気がつくはずです。そうなるまで、冷静に、辛抱強く待ちましょう。

最後にもう一つ別の可能性として、ねむっこさんがあまりにあっさりと関係性の終わりを受け入れ、何もなかった日常に戻ってしまったことに、彼が一方的に敗北を感じているということも考えられます。面倒なことは嫌。でも、あまりにあっさり割り切られてしまうとプライドを傷つけられたような気がして悔しい。しかしそれが自分の身勝手な感情であることは十分わかっているので、せめて自分の喪失の大きさを思い知らせてやろうと姑息に避ける……。仮にもし彼の頭の中がこんな風だった場合に、くれぐれも気をつけなければならないのは、彼の思惑に決して乗らないこと、踊らされないことです。
いずれにしても、理由も分からず独り相撲しちゃう人も、自己重要感を味わうためにそっけなくなっちゃう人も、不倫なんていう高度な恋愛には100万年早いので、彼には大人になってから出直してもらいつつ、関係性をあっさり手放したご自分を改めて大絶賛してあげましょう!

紫原明子さんへのお悩み相談はこちらから!

イラスト:わかる

紫原明子● 1982年、福岡県生まれ。個人ブログが話題になり、数々のウェブ媒体などに寄稿。2人の子と暮らすシングルマザーでもある。Twitter

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