くらし

部屋の状態はあなたの心理。片づけが及ぼす効果を検証する。

部屋が汚れるのは、心の中に片づけられない理由があるから。自分と向き合い、心地よい空間を作ることで、人生に思わぬ展開がある。
  • 撮影・黒川ひろみ イラストレーション・田中麻里子 文・石飛カノ

[片づけの心理]心の中の葛藤が、ものを増やし部屋を汚す。

伊藤勇司(いとう・ゆうじ)さん●片づけ心理研究家。日本メンタルヘルス協会公認心理カウンセラー。「部屋は自分の心を映す鏡である」をモットーに8000人以上の片づけをサポート。

「部屋が片づけられない背景には、人間関係やお金の悩み、やりたいことが見つからないなど、さまざまな心理的葛藤が潜んでいます」

と言うのは、心理学的なアプローチで部屋の状態を読み解き、「片づけの考え方」をアドバイスする片づけ心理研究家・伊藤勇司さん。

「現代はものも情報も多く、世の中的に部屋が片づかないベースができています。自分に大切なものが見えていない人は、片づけられない。しかし片づけを通して自分と向き合って、やりたいことや自分の可能性に目覚めたり、仕事で成功した人たちは数多くいます」

逆に部屋の中のほんの一部が片づけられないから、自分はダメだと思ってしまうというパターンも。

「日本人は片づけのレベルが高いと思います。いきなり収納名人を目指し、できないと理想と現実とのギャップを感じてしまう。そうではなく、自分自身の目標を目指すことが大事です。それにはやみくもに部屋の掃除に励むのではなく、まずは片づかない理由がどこにあるのかを探っていく作業が必要。一つずつひもといていきましょう」

1.やたらにものを買うのは 「代償行為」 。

「心理的な葛藤や感情を表に出せなくなると、もので埋めようとします。これは、ものを買うことで“誰かに自分を分かってほしい”という気持ちを埋めていく代償行為。人間関係でああしたいこうしたいということが叶わなかったり、人との距離感がうまくとれない人に、こうした傾向がよく見られます」

しかも、増えていくのは簡単に手に入りやすいもの。本当に欲しいというより、妥協して買ったり人からもらうなど、実はどうでもいいもの。ゆえに通販番組での衝動買いにも要注意。

2.片づかない人は「自分軸」ではなく 「他人軸」 。

「基本的に片づかない人は自分の価値観ではなく、他人軸で生きています。まず他人がどう思うかお伺いを立てて、OKをもらって初めて行動するタイプです。いい妻、いい母であらねばという気持ちが強すぎて自分のことをないがしろにする主婦に多いと思います。実際、結婚してから急に片づけられなくなったという人もいます」

みんながいいと言っているから、有名なブランドだから、ベストセラー商品だから。そんな理由で本当は欲しくないものに手を伸ばす。これぞ他人軸。

3. 「片づける」のではなく「磨く」  ことから。

「“片づけ”というフレーズを聞くだけで身構えたり嫌悪感を抱く人は少なくありません。そこで私が一番おすすめしているのが“磨く”という掃除法。片づけは脳を使う複雑な作業ですが、磨くという作業はシンプルで集中しやすく、すっきりした感覚を得やすいからです。私自身、お賽銭用の5円玉を毎日タバスコで磨いています」

試しに5円玉を磨き、びっくりするほどピカピカになると、無条件に気持ちがいい。この快感感情を得ることが、実は片づけや掃除の真の目的。

4. 一気にやらずにまずは 5分一点突破 。

今日こそやるぞ! と毎度決心するものの、ちっとも片づかない。その理由は何もかもいっぺんに済ませようとするせい。

「家全体、部屋全体を見てしまうと、その時点で片づける気力が萎えてしまいます。すべての部屋をいきなりきれいにするのは無理。目標を限定して、今日はここの一点だけ片づける、あるいは5分だけ掃除をすると決めましょう」

範囲や時間を限定して片づけると気が楽に持てて徐々に習慣化する。やがて部屋全体も整理されていくはず。

5. 日常の行動に片づけを紐づける。

片づけが億劫になるのは、そこそこまとまったお掃除タイムを設けようとすることが理由のひとつ。

「家に帰ってきて、脱いだ靴をきちんと揃えるだけでも充分です。それだけで玄関の三和土のスペースが増えます。わざわざ掃除の時間を確保するのではなく、片づけを日常の行動、日々のルーティンに紐づけて、できることから始めましょう」

そのほか、歯を磨くときに洗面台を拭く、お風呂に入るときに浴槽を洗うなど、ちょっとした習慣を増やしていけばよし。

6. 完了経験を繰り返す。

「片づけられない人がなにごとにおいても口にするのが“できない”というフレーズです。大人になると何かを完了させて

“できた”という経験が少なくなりがち。だから時間や範囲を決めて片づけが〝できた〟という経験を繰り返す。これが習慣化させるためのポイントです」

たとえば、キッチンのシンクだけをピカピカに磨いて完了させる。すると次は蛇口の汚れが気になり、その次はコンロの汚れが気になって磨きたくなる。ひとつの「できた」によって自然に続けたくなるという仕組み。

7. 感性が開発したあと、好きなものを探す。

部屋の中に不要なものが増えてしまうのは、自分にとって本当に必要なものや好きなものを見失っているから。

「片づけるという行為は部屋をきれいにするだけでなく、判断力を鍛える練習になります。そして自分は本当は何がしたいか、何が必要なのかに気づく作業でもあります。自分はこうしたいんだ! という感性が開発されたら、その時点で好きなものを探してみましょう。家具、インテリア、洋服、なんでも構いません。自分はこれが好き、と素直に感じられるはずです」

8.自分の片づけと家族の片づけを 区別する 。

家族が同じ家に住んでいるという場合、片づけが習慣化したからといって、家の中すべてを自分の思いどおりに整理整頓するのはNG。

「家族の片づけと個人の片づけには明確な違いがあります。たとえば、妻にプライベートスペースを片づけられてしまった夫が、不倫に走ったり家に帰らなくなった例も。家族としてどういう暮らしをしたいのか、何が心地いいのかを共有していくことがとても重要。きれい好きの人の意見を優先するのではなく、常に家族で話し合いを」

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