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私が1段ずつでも昇って行けば、次の人はもっと先まで行けるんじゃないかと思っています――若原千鶴子(船舶保険連盟)

1977年創刊、40年以上の歴史がある雑誌『クロワッサン』のバックナンバーから、いまも心に響く「くらしの名言」をお届けする連載。今回は、働く女性のパイオニアの発言に耳を傾けます。

文・澁川祐子

1978年10月25日号「男の中で働く女たち」より
1978年10月25日号「男の中で働く女たち」より

私が1段ずつでも昇って行けば、次の人はもっと先まで行けるんじゃないかと思っています――若原千鶴子(船舶保険連盟)

百貨店や製薬会社などの大手企業の社員から、建築家、写真家、弁護士まで。男性と肩を並べて働いている女性たちへのインタビュー記事で、いちばん心に残ったのが今回の名言です。

船舶保険連盟に勤務する若原千鶴子さんは、女性で初めて甲種一等航海士の試験にパス。船長の資格も持っているにもかかわらず、船長になることはおろか、船に乗ることさえできないといいます。

理由は、女だから。当時の船員法には、女性の夜間労働禁止の規定があり、そのために当直ができず、航海に出ることが許されていなかったのです。国会でも問題になったそうですが、彼女1人のために法律を変えることはできないとの結論に。海に出たくても出られない日々が続くなかで語ったのが、この名言です。

最初の1人がいるからこそ、あとに続く人が出てくる。未来に込める思いが伝わってくる発言です。

以来40年あまり、いまの状況はどうなっているのか調べてみたところ、2017年に、日本郵船132年の歴史で初めて女性船長が誕生したというニュースがひっかかりました。

なんとも遅々とした歩みだとは思いますが、それでも彼女のもっと先を行こうとする女性たちが続いたことには間違いありません。名も知れぬ女性たちの一歩一歩が、いまの女性たちの働く場を広げていってくれたのだと痛感させる言葉でした。

※肩書きは雑誌掲載時のものです。

澁川祐子(しぶかわゆうこ)●食や工芸を中心に執筆、編集。著書に『オムライスの秘密 メロンパンの謎』(新潮文庫)、編著に『スリップウェア』(誠文堂新光社)など。

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