過去に何度か経験したのは“客席前方は座布団に座るお座敷タイプ、後方には椅子席を並べる洋式仕様”という会場設営です。
「全部椅子席にしたほうがお客さまも楽なんじゃありませんか」と主催者さんに提案しましたが、世話役さんは「この地域は年配の人が多いんだ。畳の上で生活するのに慣れているから、座敷の席を作ればみんな喜んで座るさ」と。
ところがいざ蓋を開けてみると、若いお客さまは「日頃から慣れてない」、年配のお客さまは「膝がツラい」という理由でほとんどのかたが椅子席へ。客席の前半分は“無人の荒野”の如き光景で、遠い遠いお客さまに向かっておしゃべりしなくてはならない噺家は面食らうことはなはだしく……。よく見たら座敷に自信満々だった世話役さんまで椅子席でのんびり落語日和だったのです。