【南 伸坊さん×清水ミチコさん 対談】物真似【1】
日本人が大好きなモノマネ、その面白さの秘密を探ります。
撮影・黒川ひろみ、南文子(南さん「本人術」写真) 文・嶌 陽子
ミッちゃんと僕の顔マネは「ずさん」なところが共通点。(南さん)
完璧だとつまらない。これ、言い訳じゃないです(笑)。(清水さん)
時の人に写真と文章で扮する 「本人術」が大人気の南伸坊さんと、声マネ、顔マネともに膨大なレパートリーを誇る清水ミチコさん。モノマネ界の大家2人による、笑ってばかりの対談をお届けします。
南伸坊さん(以下、南) “本人術”を始めたのは、家でふざけたのがきっかけ。昔、玄関にスカートをはいたクマのぬいぐるみがあって。そのスカートの部分を頭にかぶって鏡を見たら、聖徳太子みたいだなと思ってさ。
清水ミチコさん(以下、清水) そもそも普通、スカートを頭にかぶらないよね。なんでかぶったの?
南 それはわからない(笑)。
清水 見てるうちに、つい(笑)。
南 ちょうど長い靴べらがあったから胸の前で持ってみて、うちの奥さんを呼んだら、「あ! 聖徳太子!」って。それで写真を撮って友だちの編集者に見せたら、連載やろうってなってね。最初にやったのはチェッカーズ。「グリコ森永犯」とかもやったな。
清水 キツネ目の人。モンタージュ写真の顔マネですか(笑)。それだけで面白い。
南 よく「誰になりたいですか」とか聞かれるんだけど、こっちは笑わせようと思ってやってんだから、誰かになりたいっていうのとはちょっと違う。
清水 でも私、声マネの時はその人になりたいっていう気持ちがあるよ。矢野顕子さんとかユーミンとか。
南 あ、それはわかる。俺も学生時代に自分が好きなイラストレーターの作品の模写してたけど、本当に好きじゃないと模写する気になんないよね。そこは、ミッちゃんにとっての音楽系のマネと一緒。
清水 私は声マネから始めたんだよね。小学生の頃から友だちと放課後に音楽室とかに集まって歌ってたの。「あの人のマネして」ってリクエストされたり。高校生になると、女子はみんな恥ずかしがってモノマネをやらなくなるんだけど、私だけ続けてた(笑)。顔マネをやり始めたのはもっと後で、南さんの本を見たのがきっかけ。「これは素晴らしい」と思ってマネしたの。
南 ミッちゃんがスゴいのは、ずさんさも引き継いだこと(笑)。
清水 あははは。この前、元陸上選手の為末大さんと話した時、私が「顔マネがあまり似てなくても、ずさんな感じを笑ってもらえることがある」って言ったら、為末さんが「シンクロナイズドスイミングでも、双子がそっくりな演技をしてもちっとも感動しないけど、違う2人がそっくりやろうとすると、すごく感動する」って。不思議だよね、少し違うほうが感動するって。
南 完璧なのってなんか面白くないんだよね。
清水 だから顔マネも「ここをちょっとコンピュータでいじろう」ってやると、すごくつまらなくなる。
南 似ることは似るんだけどね。
清水 ずさんなままのほうがいい。これ、言い訳じゃないですからね(笑)。
カツラの中にティッシュを詰めて頭の形を変えるテクニック。
南 マネするのに髪型は大事だよね。髪型が似ると80%は似てくる。
清水 確かに。髪型が個性的な人は、似せやすいかも。
南 ハゲかつらっていうのがあるんだけど、それを使うと頭の形も変えられる。俺は頭のてっぺんがとんがってるから、頭が丸い人をやる時はティッシュを入れて丸くする。
清水 カツラの中に、さらにティッシュを入れるの? すごいね。あと小道具としてはシワ伸ばしテープとかもあるよね。
南 でもそういう小細工がどんどん細かくなってくると“ずさん”の味がなくなっちゃう。
清水 そうだね。気をつけなくちゃ。
南 だから鼻の形を似せたい時は、粘土くっつけるよりは、鼻の中に無理やり詰め込むほうがいい。おすすめはしませんけど(笑)。
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