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【山田康弘さん×譽田亜紀子さん 対談】縄文という時代【2】

多くの人がなぜ、縄文に惹かれるのか。
その精神文化を辿っていくことで、見えてくる現代社会が抱えるものとは?

撮影・柳原久子 文・一澤ひらり

死は自然に還り再生するための通過点でした。(山田さん)

「頭部がカサ型のこの石棒は栃木市で出土したもので、高さは2m4cm。 屋内で展示されているものとしては国内最大級です」(山田さん)
「頭部がカサ型のこの石棒は栃木市で出土したもので、高さは2m4cm。 屋内で展示されているものとしては国内最大級です」(山田さん)

骨を集め、疑似的な祖先を作って、同じルーツだと結束したのでは。

山田 おそらく中期の集落は一度解体してしまい、それぞれが自力更生する状態だったものが、温暖化してくるとまた人を集めて大量に労働力を投入する場面が出てくる。今度は地縁的な人々を集めて集団化を図りますが、そこで死者が利用された。人骨を1カ所に集めて埋め直し、たぶん擬似的なみんなの祖先を作ったんですね。

譽田 共通の祖先を共同で敬うことで、擬似的な血縁関係を結ぶということでしょうか。

山田 そうです。自分たちは同じ集団、同じ祖先から出ているんだという。そうした集団を「クラン」と言いますが、これは“自分の祖先”という発想がないと形成されないですね。

譽田 全体としては大きな命の循環の中にいるけれど、その一部を見れば親、子、孫という直線的な系譜も脈々とあるということですね。動植物に対してはどうだったんでしょうか。

山田 獣骨や木の実を入れた土器を埋めた祭祀遺構が何例もあるので、再生を願われたのは人だけではない。むしろ命の循環の輪の中に動植物がいて、その中に人間がいると考えたほうが自然です。

譽田 現代では死は忌み嫌われて遠ざけられがちですけど、縄文って死がとても身近ですよね。集落の中央広場にお墓を作ったり、家の中に埋葬したり、死者とともに生きているという感じがします。死があるからこそ生がある。縄文人のそんな思いが伝わってきます。

山田 縄文人にとって死は自然に還ってもう一度生まれるための通過点なんです。

譽田 死んで消滅するのではなく、自然のあらゆるところに存在して生き続ける。そう考えると、今の閉塞感にあふれた社会も、清々しく生きられるような気がしてきます。

山田 今、縄文がこれだけ人を惹きつけるのは、社会に生きる不安に対して多くの人が何か拠り所を見つけたいと思っているからなのかも。そういう意味でも、縄文人から学ぶことは多いです。

歴史学・考古学・民俗学の宝庫「国立歴史民俗博物館」

今年3月にリニューアルオープンした総合展示第1展示室(先史・古代)は必見。●千葉県佐倉市城内町117…

今年3月にリニューアルオープンした総合展示第1展示室(先史・古代)は必見。●千葉県佐倉市城内町117 TEL.03-5777-8600(ハローダイヤル) 開館時間[3月〜9月]9時30分〜17時、[10月〜2月]9時30分〜16時30分 総合展示入館料600円、大学生250円、高校生以下無料。※企画展示は別料金。

山田康弘(やまだ・やすひろ)さん●1967年、東京都生まれ。国立歴史民俗博物館教授。専門は先史学。著書に『縄文人の死生観』(KADOKAWA)など多数。

譽田亜紀子(こんだ・あきこ)さん●岐阜県生まれ。土偶や縄文時代の魅力を伝える“土偶女子”として活動中。著書に『知られざる縄文ライフ』(誠文堂新光社)など多数。

『クロワッサン』1004号より

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