くらし

事情通のこしら師匠が、話題の“仮想通貨”について教えます。

最近よく聞く「仮想通貨」。ブーム前から着目し、自らの体験をメディアでも度々披露する落語家・立川こしらさんに、その仕組みを聞いた。
  • 撮影・岩本慶三
立川こしら(たてかわ・こしら)さん●落語家。1975年、千葉県生まれ。’96年、立川志らくに弟子入り。2012年、真打昇進。最新刊は『その落語家、住所不定。』(光文社)。

まず、基本的なことから……「師匠、仮想通貨っていったい?」

わかりやすく言えば、みなさんすでに仮想の通貨を使ってますよね? たとえばSuicaとか。あのカードの中に実際のお札や硬貨が入っているわけではない。もっと古くはテレホンカード。もともと日本政府が発行した硬貨じゃないと使えなかった公衆電話で、500円分の通話ができるカードが電電公社から発行された。誰もがこの500円分のカード=500円と信じたわけです。あるいは、家電量販店のポイントもそうですよね。商品を買ったら、その金額の10パーセント分をポイント換算して1ポイント=1円で使うことができる。最近では携帯アプリで通貨を使うコード決済も出てきました。PayPayやLINE Payとか。ビットコインに代表される仮想通貨は、それに近いんですが、正確にいえば、こちらは日本円に代わる通貨として、日本国内のみならず世界で使えるデジタルデータのお金です。

こしらさんが現在取引している台湾の「バイナンス」社で扱っている銘柄の値動き。

多くの人が便利と思えば価値が上がるのが仮想通貨。

さらに、日本円でいえば日本という国家が後ろ盾になって発行していますし、楽天Payなら、楽天という企業が後ろ盾になっていますが、仮想通貨の場合は一個人でも発行することができるのが特徴なんです。たとえば、僕が「1こしら」という仮想通貨を考えたとします。そして「僕の落語会を見たい人は1こしらを払ってください」と呼びかけたとします。今、僕は2000円で落語会をやっているので、普通なら1こしら=2000円となりますが、これが僕の落語会がすごく人気が出たら、5000円になるかもしれませんし、逆に見たくないという人が多くなれば、500円に下がるかもしれない。みんなが欲しい、もっといえばこのサービスがお得で便利だなと思えば価値が上がり、不便だなと思えば価値が下がるのが「本来の仮想通貨」と思ってください。

3つの通貨の違い

仮想通貨は発行量に上限がある。また発行ペースも決まっている。これは国の金融政策に左右されなかったり、量が増えて価値が下がることを防ぐメリットがある。

こしらさんがあえて「本来」とつけたのには理由が。それは、仮想通貨が生まれた背景にある「ブロックチェーン」というシステム。これは、日本では分散型台帳技術とも呼ばれる。日本円などの国が発行する通貨を預かる銀行はそれぞれ顧客のデータをひとつの大きなサーバー(中央サーバー)で管理してセキュリティを保持していたのに対して、ブロックチェーンは顧客のデータを複数のサーバーに置き、ネットワークで繋げて、取引内容や誰がどれだけ通貨を保有しているかを誰もがチェックできるシステムだ(保有者は匿名なのでプライバシーは守られる)。この利点は、中央サーバーに比べて管理コストがかからないぶん、送金や決済などの手数料が安くできることだ。さらに……。

たとえば僕が持っている仮想通貨から1コインをAさんという方に売ったら、そのコインには売買記録が残り、それを見る人が皆、知ることができる。お金に情報を紐づけられるのが面白い。今はまだ実現していませんが、たとえば僕が持ってる仮想通貨が歯医者で使えて、その時の治療内容を記録に残しておけば、今度別の歯医者さんに行っても、治療歴がわかるので、きちんと対処してくれる。もっと言えば仮想通貨は世界で使えますから、海外で歯が痛くなっても、その国の通貨や保険証がなくてもこの通貨で払うことができることになる。あるいはこれはすでにある仮想通貨ですが、スマホのパケット、今はギガとも言いますが、その月の余った分を仮想通貨に交換するサービスがあります。たとえば、日本円でこの通貨を買って、アメリカにいるときに容量が足りなくて、この通貨でパケットを買うことができたら米ドルはいらなくなりますよね。仮想通貨だからできるサービスが増えると、便利になるなと思ったんです。

仮想通貨のメリットとデメリット

主なメリット

●国や地域に関係なく利用できる。
●国際送金や個人間の直接送金ができ、手数料も安い。
●利益を得ることもできる。
●24時間365日取引(お金のやりとり)が可能。
●少額から取引ができる。

主なデメリット

●投機的な側面が強い(値動きが激しく大損する可能性がある)。
●利用できる場所が少ない。
●法定通貨と違い、国による価値の担保がない。
●送金先を間違えると原則返ってこない。
●簡単に発行できるので詐欺が起きる可能性がある。

メリットには決済等の迅速性や手続きの簡略さが。逆にデメリットは投機的な要素が挙げられる。

データの管理システム

仮想通貨(ブロックチェーン)

日本円(銀行の中央サーバー)

仮想通貨はブロックチェーンを採用。これは顧客のデータを分散し、共有することでデータ改ざん等を防ぐ。これに対し、円を扱う主な銀行はデータを中央サーバーで一括管理。

投資目的や儲かるから、と仮想通貨を始めるべきではない。

しかし……と、こしらさんは、ここで今起こっている現実の仮想通貨現象について教えてくれた。

国に縛られない、独自のサービスが可能なお金だった仮想通貨ですが、今の日本では投機や投資目的で買う人がほとんど。「今買えば100万儲かる」とか「乗り遅れないうちに」とかいう言葉に釣られて、ブロックチェーンの意味もわからずにネットで仮想通貨を扱う取引所に口座を開設して、とりあえずビットコインを買って、大半が損をしている。価格もすごく乱高下しています。僕の持っている仮想通貨も妙な方向にいっちゃっています(笑)。損得で考える人は今は始めないほうがいいと僕は思いますね。

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