いまどきの、得するお金・損するお金。
お金の話は苦手だからと敬遠していては、置いていかれるどころか大損する危険も。
まずは更新必須の最新事情とキーワードをファイナンシャルプランナーの深田晶恵さんと家計コンサルタントの八ツ井慶子さん、ふたりのプロに教えてもらいます。
イラストレーション・三東サイ 文・室田元美
[Topic!]私たちの暮らしは未知のステージへ。まずは現実と向き合い、把握する。
今後、生活は厳しくなると言われるけれど、いまどんなことが起きているのだろうか。「私は4つのキーワードで捉えています。1.人口減、2.少子高齢化と超長寿、3.低経済成長もしくはゼロ成長、4.デジタル革新です」と話すのは八ツ井慶子さん。「これまで誰も経験したことのない渦の中で10〜20年は『家計防衛時代』が来るのでは。でも乗り切る方法はあるので、悲観せず前向きに準備することが大切です」
「もう右肩上がりの時代はやってこない」とクギを刺すのは深田晶恵さん。
「もはや日本経済は成熟し、少子高齢化が進み、税金や社会保険料が上がって手取りは減るいっぽう。とくにバブルを経験した世代は、今日より明日はもっとよくなるという幻想を捨てましょう。現実を受け入れ、将来に備えて堅実に蓄えを増やす必要があります」
[Topic!]人生100年を安心して暮らす。資産づくりはここに注意したい。
世代ごとに注意点が異なる、と深田さん。「30代、40代は夫婦共働きが多く世帯収入が多いにもかかわらず、貯まらないんです。原因は『内緒と不干渉』。夫婦がお互いの収入をオープンにし、家計に向き合う必要があります。50〜60歳は老後資金作りの時期。ひと月に見直せる金額を足し算して、12カ月でかけ算すれば年にいくら貯められるかわかるはず。会社員などは60歳になると収入がダウン。苦しくなりますが収支トントンで乗り切る。老後=65歳以降は取り崩しの引き算、割り算です。貯金から不測の事態に備えて500万〜1000万円引いた残りを、あと30年生きると考えて30で割り、12で割ってひと月に使える金額を出します。老後の赤字は月5万と言われますが、夫婦5万円ずつ働けば半額は貯金でき、取り崩す時期も遅らせられます」
[Topic!]この先、損をするのはこんな人。得をするのはどんな人!?
「お金のことを知っているか知らないか、関心があるかないかで、得する人、損する人に分かれます。たとえば退職金の場合、一時払いと年金として受け取るのとでは、一時払いのほうが圧倒的に手取りが多くお得です。また公的年金は、受給開始時期を遅らせると増額されますが、税金や社会保険料もアップしてしまいます。年金の繰り下げは慎重にしたいもの」(深田さん)
「情報を自分から取りに行く人、それを自分のフィルターにかけて、必要なものをちゃんと選び取っている人、時代の変化を知って合わせられる柔軟さのある人は得をします。反対に、金融商品に限らず健康器具やサプリメント、化粧品など人がいいと言うものを鵜呑みにして、よく考えずに飛びついてしまう人は、要注意。無駄遣いしがちです」(八ツ井さん)
[Topic!]まだ間に合う! いますぐ、できることから始めてみよう。
老後資金、全然足りない。もう遅いのでは? と心配している人にも「大丈夫、まだ間に合います」と深田さん。
「まず1カ月にどれくらいのお金が出ていくのか、暮らしのサイズを知ること。お金が貯まらないと悩む現役世代は、趣味やお小遣いではなく確実に削れる大きなところから『抜本改革』しましょう。つまり携帯電話や生命保険など月々出ていく固定費の見直しです。そのサービスや特約は本当に必要なのか。一度見直すと翌月から浮いた分を貯金に回せます。メリハリをつけることも大事。教育にお金を掛けるなら、その分ほかを削らなくてはなりません。そして主婦の方に勧めたいのが、自分の老後資金専用の口座を作ること。夫が亡くなると年金が激減します。今から月に7万〜8万円貯めれば10年で1000万円近く蓄えることができます」
深田晶恵(ふかた・あきえ)さん●ファイナンシャルプランナー。FP会社「生活設計塾」クルー取締役。個人向けコンサルティング、講演、TV番組などでの実用的なアドバイスに定評が。近著『まだ間に合う! 50代からの老後のお金のつくり方』も大好評。
八ツ井慶子(やつい・けいこ)さん●家計コンサルタント。日本中の家計を元気にしたい、との思いで「生活マネー相談室」を立ち上げ、代表を務める。城西大学経済学部非常勤講師。TV番組にもコメンテーターとして多数出演。
『クロワッサン』1002号より
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