くらし

自分が機嫌よく居心地よく暮らす。やましたひでこさんが断捨離を続けて辿り着いた“根城”。

まさに断捨離(R)を体現する、やましたひでこさんの部屋。清々しい空間では感性が研ぎ澄まされ、人生に必要なことが自ずと見えてくる。
  • 撮影・青木和義 文・一澤ひらり

空間の中でモノを生かす。断捨離はすっきりの上の美しさを求めています。

一般財団法人 断捨離(R)代表やましたひでこさん。不要なものは何一つない。好きなものだけでしつらえた、広々としたリビング。

今年2月に、東京都内のタワーマンションに引っ越したばかりのやましたひでこさん。高層階からの眺めは眼下に東京湾が広がる絶景で、開放感にあふれている。

「私の部屋選びの第1条件は眺望。ここは見晴るかす海原で、広い世界に漕ぎだしていける気がするんです。とはいっても、目の前のマンション棟から移っただけ(笑)。もともと石川県に自宅があったけれど、いま夫は沖縄にいて、ここは私の仕事場というか根城なの」

なぜ夫が沖縄かは後述するとして、引っ越しの際はゴミ袋1つしか出なかったそう。さすがは断捨離の哲人! ご覧のとおり、清々し
く洗練されたリビング。断捨離はモノとの関係性を通して自分と向き合いながら、日常生活を健やかに整える暮らしと心のメンテナンス。この空間こそ、やましたさんが辿り着いた軽やかな境地だ。

「モノを捨てました、部屋が整いましたっていうのは断捨離の入り口にすぎないんです。空間の中でモノをどう生かすか、そこに美しさが欲しいんですね。どんなにいい調度品もモノに埋もれていたら美しくないでしょ。空間がすっきりしているから、モノの存在が際立ちます。余白の美が大切ですね。

スロースターターでしたけど、 断捨離で生き方が広がって。

やましたさんの人生が一変したのは10年前、『新・片づけ術 断捨離』を上梓したことだった。

「55歳のスロースターターでしたけど、断捨離を広く伝えるうちにたくましくなったんです。それまでは夫の両親と同居して、夫の仕事を手伝いながら介護もしたし、自分の身内を看取って後始末も。周りからアテにされると、やらなきゃと思うのね。でも、誰にもアテにされないというポジション取りができるようになったんです」

自宅のある石川県と東京を往復する日々が始まり、ホテル暮らしを約3年続け、やがてマンションを借りて念願のひとり暮らしに。

「実は引っ越し好き(笑)。この6年は2年に1度ぐらいのペースで転居しています。引っ越しは人生の中でこれが必要か、適正か、心地よいかという『要・適・快』を見直して、不要、不適、不快なものを手放す絶好のチャンスなんです」

カップボードには器好きのやましたさんが集めたティーカップや茶器が美しく並べられて。

やました家に沖縄移住計画が持ち上がったのは2年半前のこと。

「夫はいま70歳ですけど、65歳で仕事を辞めてからは家で友人たちとお酒を飲んでは思い出話にふけっていました。そんなある冬の晩に家に帰ったら、『寒いなあ、暖かい沖縄に行きたいなあ』って、夫がボソッと呟いたんです」

俺はひとり寒い石川で辛抱してるんだよというアピールとは察したけれど、スルーして言った。

「ならば、沖縄で暮らそうよ」

時期尚早とたじろぐ夫に、

「いつ動くの? 今でしょ!」

そこからの行動は素早かった。夫婦で沖縄旅行に出かけて物件探しが始まり、格好のマンションを見つけたのだ。

「断捨離は既成概念を壊すことだったから、たくましくなりました。夫婦関係も同じですね」

自由な立ち位置で別居生活。夫はロングバケーション中。

「過去を卒業し、未来を描くための投資だと考え、貯金をはたいて購入しました。もし別の所に行きたくなったらまた手放せばいい」

かくして夫は愛犬と沖縄に移住。首里城の坂道を散歩して足腰が鍛えられ、何よりも積極的になった。

「ロングバケーション、って夫は言ってます。戻りたくなったらいつでも石川に戻ればいいという立ち位置で、彼も土地や家に対するしがらみはなくなりましたね」

夫とは部活で苦楽を共にしたチームメイトみたいな感じ、とあっけらかんと笑うやましたさん。

「お互いが望んでいるのは、縛られない・縛らない夫婦関係なんです。何かあれば助け合いますが、いまはひとりで東京に暮らしているのがご機嫌ですね」

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