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1年前に骨粗鬆症予備軍と言われました。治療をしたほうがいいですか。【86歳の現役婦人科医師 Dr.野末の女性ホルモン講座】

撮影・岩本慶三 イラストレーション・小迎裕美子 構成・越川典子

野末悦子さん 産婦人科医師、久地診療所婦人科医
野末悦子さん 産婦人科医師、久地診療所婦人科医

Q.1年前に骨粗鬆症予備軍と言われました。 治療をしたほうがいいですか。

1年ほど前、自転車で転び、腕を骨折しました。整形外科で「骨粗鬆症予備軍だね」と言われましたが、まずは骨折の治療を優先。骨折が治った今、気にはなっているものの、これといった治療はしていません。母親は80歳で骨粗鬆症です。職場の先輩から、婦人科で診てもらったほうがいいと言われたのですが、骨のことで婦人科へ行くことはできるのでしょうか。(M・O 49歳 団体職員)

A.自分の骨密度をきちんと把握しましょう。 婦人科でも治療できます。

骨粗鬆症予備軍と言われたことが気になっているというM・Oさん、はっきり申し上げますね。放っておいていいことは一つもありません。先輩のアドバイスは正しいです。今すぐ、骨密度を調べましょう。

なぜ婦人科で骨粗鬆症の検査・治療ができるかというと、女性ホルモン(エストロゲン)と骨は、大きな関係があるからなのです。エストロゲンは、骨からカルシウムが流出するのを止め、再び骨に戻す作用をしています。ですから閉経でエストロゲンが分泌されなくなると、骨量が急激に減ってしまうわけです。そういう意味では、女性であること自体が骨粗鬆症のリスク要因なんですね。また、小柄で痩せていることも、リスクになります。体重が軽いと骨に負荷がかかりにくく、低栄養の可能性も考えられるからです。他にも、喫煙、運動不足、骨折の既往、家族歴なども、リスク要因と言われています。

【HRTは骨粗鬆症を予防する】

1年前に骨粗鬆症予備軍と言われました。治療をしたほうがいいですか。【86歳の現役婦人科医師 Dr.野末の女性ホルモン講座】

スタート時の骨量が同じでも、HRTを続ける場合、治療しない場合の差は大きい。途中やめれば骨量は減り、減ってから始めても増加することがわかる。

出典:1981 Chieditansen

骨密度の検査では、二重X線吸収法(DXA法)を用いた機械で、腰椎や大腿骨近位部などのX線写真を撮ります。YAM値(若年成人平均値)の70〜80%だと骨粗鬆症予備軍、70%以下だと骨粗鬆症と診断され、治療対象になります。

治療法にはいろいろありますが、女性ホルモン補充療法(HRT)でエストロゲンを補充するのは有効です。SERM(選択的エストロゲン受容体モジュレーター)は、骨に対してエストロゲンと同じ効果を出す骨吸収抑制剤(骨が壊れるのを防ぐ薬)です。他にも、骨形成促進剤(骨をつくる薬)や、カルシウム剤や活性型ビタミンD3などの薬剤を併用することもあります。

骨は目に見えないので、20代に比べて身長が低くなった人は、一度調べたほうが安心ですね。カラダの部分によっても骨密度が異なる場合もあるので、気づかない間に背骨が圧迫骨折していたということも少なくありません。骨粗鬆症は、予防が第一、次に早期発見・早期治療が肝心だと言われる理由ですね。

自分のカラダがどのような状態なのか知っておくこと。そして、治療を始めたら、根気よく続けること。HRTにせよ、他の薬剤にせよ、最低5年は続け、年に1回は骨密度を確認しましょう。食事を見直し、運動習慣を身につけることも欠かせません。

大丈夫。骨量は必ず増えます。

80代、90代、もしかしたら100歳まで生きるかもしれない時代です。50歳前後の今、骨密度を上げ、維持することの意義はとても大きいとわかりますね。

※症状や治療法には個人差があります。必ず専門医にご相談ください。

閉経後30年、40年を考えて、今から骨量を増やそう。(Dr.野末)
1年前に骨粗鬆症予備軍と言われました。治療をしたほうがいいですか。【86歳の現役婦人科医師 Dr.野末の女性ホルモン講座】

野末悦子(のずえ・えつこ)●産婦人科医師、久地診療所婦人科医。横浜市立大学医学部卒業。川崎協同病院副院長、コスモス女性クリニック院長、介護老人保健施設「樹の丘」施設長などをへて現職。

『クロワッサン』998号より

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