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認知症の予兆……!? 気になるもの忘れのあれこれ。

自分の忘れっぽさの度合いが、最近どうも進んでいるような……心あたりはありませんか? 今こそできる対策があります。ここで学んでおきましょう。
最近もの忘れが増えた。なにか病気が隠れているかも……と焦る前に、まずは症状について医学博士の加藤俊徳さんに聞いて理解しましょう。
食べたものが思い出せない、次の瞬間にやるべきことを忘れる、といったもの忘れは治せます。

撮影・角戸菜摘 文・黒澤祐美

Q.もの忘れ・アルツハイマー病・認知症の違いは?

A.「50歳を過ぎる頃には脳の衰えを徐々に自覚し、55歳頃には多くの人が認知機能の低下を体験します。脳の成長が落ちてくるときがいわゆる『もの忘れ』を発症するゾーン。専門的にはSCD(自覚的認知機能低下)といいます。SCDの人は認知症の一歩手前であるMCI(軽度認知障害)に移行するリスクが高いと言われています。そして認知症は、脳自体に変化が起こることで生じるもの。日常生活が困難になる状態のことを指し、アルツハイマー病はその認知症を引き起こす原因の一つ」(加藤さん)

「今日の朝ご飯なに食べたっけ?」という、時間の経過とともに記憶が曖昧になる状態がSCDであり、「今日ご飯食べたかな?」と、その日にあった出来事が記憶に残らない状態がアルツハイマー病を含む認知症というわけだ。

《脳を鍛えている人といない人の脳の成長力の違い》

認知症の予兆……!? 気になるもの忘れのあれこれ。

Q.認知症になりやすい人の特徴は?

A.脳が衰える大きな原因の一つが、定年退職だ。40年働いてきた人がピタリと仕事をやめると、それまで使っていた脳の機能が停止し、急激に老化が進むということも珍しくない。これを防ぐ一番の方法は、働いていたときと同じように時間を刻み、こまめにカラダを動かすこと。

「ライフスタイルそのものが脳に影響することがわかっています。逆をいえば、日常生活のちょっとした工夫で老化をストップすることも可能。また、認知症になる原因には男女差もあります。男性は『結婚していない』『BMIが30以上』だと認知症のリスクが高まり、女性の場合は『喫煙』が影響します。というのも喫煙はLDLコレステロールを増やし、高血圧のリスクを高めるため。喫煙に限らずこれらの症状を引き起こす食生活もボケる原因になります」

● 自尊心が強い
● 時間にルーズ
● 家事をやらない
● 人と交流する機会が少ない
● 高血圧
● LDLコレステロール値が高い

Q.もの忘れを放置するとどうなるの?

A.もの忘れが増えるとすぐさま認知症と結びつけ、焦りはじめる人も多い。けれど、一口に「もの忘れ」といっても、病的なものとそうでないものがあることを覚えておきたい。

「もの忘れには『生理的もの忘れ』『病的もの忘れ』『脳の発達によるもの忘れ』といった3種類があります。日々仕事や家事で忙しく過ごしている人はタスクに追われ、情報が常に入れ替わっている。記憶が塗り替えられることで前の記憶を思い出せなくなるのが『生理的もの忘れ』であり、現代人に多い。一方『病的もの忘れ』はアルツハイマー病や認知症が原因のもの忘れ。そして『脳の発達によるもの忘れ』は個人の潜在的なもので、いわばその人の〝脳のクセ〟。要は性格と同じで、もともともの忘れをしやすいタイプの人がいるのです。どれに当てはまるか確認して」

●生理的もの忘れ
スマホやPCの検索機能に頼り、脳を使わなくなることでも生じる。脳のトレーニングで改善しやすい。

●病的もの忘れ
脳そのものが変化するアルツハイマー病などの病気から生じるもの忘れ。記憶が低下したという自覚もない。

●脳の発達によるもの忘れ
加齢によって生じるものではなく、昔からの“クセ”によるもの忘れ。自分の脳のクセを知ることで改善できる。

Q.もの忘れは治せるもの?

A.ずばり「治せる」と、加藤さん。右上のグラフでいう『もの忘れゾーン』に突入していても、脳を鍛えることで脳の成長は右肩上がりに伸びていくという。

「下記のMRI画像は同じ女性のものです。黒く枝のように見えるのが神経線維の集まる白質で、この枝が濃いほど脳がイキイキしていることを示しています。右の写真は、毎日ほぼ座りっぱなしのとき。同じパターンの日常生活を繰り返すことで脳を使う部分が限られ、使っていない部分が衰えてしまった結果です。その後、彼女に毎日1時間以上ウォーキングをしてもらいました。すると脳が刺激され、左のように脳が活性化したのです。物事の判断や自分を振り返る能力も強くなり、脳の機能が高まりました。このように、脳は運動量を増やすだけで変わるのです」

同じ女性のMRI画像。1日1時間歩いたり、外出するようになって、脳の頭頂部が活性化し、若返っているのがわかる。
同じ女性のMRI画像。1日1時間歩いたり、外出するようになって、脳の頭頂部が活性化し、若返っているのがわかる。
加藤俊徳(かとう・としのり)●医学博士。加藤プラチナクリニック院長。著書に『認知症をくいとめる! 1…

加藤俊徳(かとう・としのり)●医学博士。加藤プラチナクリニック院長。著書に『認知症をくいとめる! 1日3分「脳番地」トレーニング』(PHP研究所)ほか多数。

『クロワッサン』997号より

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