大人の女性…。もはや誰から見ても大人な風体と熟年齢の私ですが、20代の時にイメージしていた落ち着きある大人の女性とは到底掛け離れた現状です。
20代の頃に取材した、当時40代後半の女性はまさに私がイメージした通りの大人女性。身につけるもの、暮らしにまつわるもの全てが、圧倒的な美意識をベースに厳選されておりました。
背筋がピンとするエピソードをたくさん伺いましたが、「傘はちゃんとしたものを選ばないと。気分が落ち込む雨の日もおかげで楽しく過ごせるでしょ? 傘を主役にしてその日のコーディネイトを考えられる、素敵なファッションアイテムでもあるんですよ」というお話には、ただ感心するばかり。
美しいタッセルがついた職人手作りの細身の深紅の傘は、広げると美しい花のようで、閉じるとシュッとスマート。どこまでもエレガントな1本。ビニ傘上等、少々の雨なら傘もささずに濡れてもお構いなしの私は「神ならぬ、美は細部に宿るってことですね」と思ったのでした。
さあ、あれから20年近く経った今、私の傘への美意識は成長したかと言いますと…。相変わらずビニ傘を愛用し、濡れそぼることもお構いなしの有様です。そもそも、煩わしい物を持つのが苦手で、雨の日だってできるだけ軽やかに過ごしたい。そんな私をビニ傘から卒業させてくれたのが、この傘です。