からだ

食べて痩せる、元気になる。「大豆パワー」の秘密。

  • 撮影・森山祐子、青木和義 文・高橋顕子、越川典子、青山貴子

いつもの食卓に、大豆や大豆製品をプラス。続けるほどに効果を体感します。

教授として忙しい日々を送る石渡さん。大豆の摂り方を聞いてみた。
「朝の定番は、豆乳ミルクティー、豆入りサラダ、パンです。茹で大豆や蒸し大豆は、フォークの背でつぶすと、ドレッシングやほかの野菜となじんでおいしく摂れるんです」
一方、昼食はゆっくり食べる時間がない。時には納豆のパックを開けてそのまま食べることもあるとか。
「さすがに、研究室で納豆を食べているとみんなに笑われます。でも、納豆にしかない独自の栄養成分を知れば納得してもらえると思います」
石渡さんがとくに注目しているのは次の4つだ。

ナットウキナーゼ……ネバネバに含まれる酵素。血液をサラサラに。
ビタミンK2……カルシウムの流出を抑え、骨の形成を高める。
ポリアミン……抗炎症作用。細胞の老化を防ぐ。
ポリグルタミン酸……ネバネバの主成分。アミノ酸の一つでカルシウムの吸収を促進する。

納豆は血栓溶解作用があるといわれています。血栓は夜、作られるので、40代以降は“夜納豆”がおすすめです」
納豆の摂取量が多い人は、少ない人よりも心血管疾患で死亡するリスクが低下するという研究結果もあるという。また、納豆菌は腸内の乳酸菌を増やす効果があることもわかっている。

大豆から考えるエシカルな=環境に配慮した食事とは。

「大豆にたんぱく質が豊富に含まれている理由は育ち方にあります」
と石渡さん。大豆の根っこにくっついている微生物「根粒菌(こんりゅうきん)」に注目。
「根粒菌は大豆から栄養をもらう代わりに、大気中の窒素を大豆に供給します。窒素はたんぱく質の原料。大豆は、たくさんの窒素を肥料にして、良質なたんぱく質を抱え込んで育つので、化学肥料がいらないんです」
自然が創り出した、すばらしく効率的なシステム。これを化学肥料で行おうとすると、莫大なエネルギーが必要になるという。
「本当に大豆は賢い子なんです」
大豆愛が止まらない石渡さん。さらに大豆は、環境面から見てもサステイナブル(持続可能)だと説明する。
「牛や豚などの家畜を育てるために要するエネルギーや水の量と比べると、大豆ははるかに生産的で効率的」
食用牛肉を1kg得るために必要な穀物は11kg。大豆は育てた分がそのままたんぱく源となる。
「世界的な人口増や限りある資源のことを思えば、大豆の食べ方を真剣に考えるときが来ているのだと思います」

【ルール1】大豆ファーストの効果。

栄養豊富な「八目納豆」。緑黄色野菜は欠かせないので夏はオクラ、冬はカブや大根の葉をサッと湯がき刻んで。

食事の初めに大豆を食べること。これを石渡さんは「大豆ファースト」と名付けた。
「大豆に豊富に含まれる不溶性食物繊維によって血糖値の上昇が緩やかになるんです。食後の血糖値を抑えることは、糖尿病や動脈硬化などの生活習慣病のリスクを抑えることにつながります」
また、朝食に大豆を摂ると「セカンドミール効果」も期待できる。
「一日のうち、最初に摂った食事がそれ以降の血糖値に影響を及ぼすというものですが、大豆を食べると昼すぎまで血糖値が上がりにくいという研究結果が出ています」
太りやすい人やダイエット中の人にもおすすめだ。
「大豆は胃や腸の中で膨れるので、腹持ちがよく、食べ応えもあるので満足感が得られるんです。これで食べ過ぎも防げます」

【ルール2】1日2回、大豆を摂る。

大豆を原料とした食品は多いので、外食時も大豆が使われている食品を探すとよい。居酒屋や和食店には必ずある。

「1回の食事で大量に大豆を食べたり、大豆イソフラボンのサプリメントを一度に飲むより、少量をコンスタントに摂るほうがいい
と石渡さん。とくに、大豆イソフラボンの女性ホルモン様効果を期待するなら、6〜8時間おきに摂るのが理想的だという。
「午前と午後2回食べるだけでも血中の大豆イソフラボン濃度が安定します。私は、おやつに煮豆やきなこのお菓子を食べることも」
忙しくてゆっくり料理ができない人は、納豆や豆乳を利用する、豆腐を冷や奴で食べるなど、調理の必要のない大豆食品が強い味方となる。
「最近では、豆乳の種類も増え、おいしい豆乳ヨーグルトも市販されています。さまざまな調理法で楽しく“1日2回生活”が続けばと思います」

【ルール3】和食バランスを基本に。

石渡さんは味噌汁だけでなくホワイトシチューに白みそ、麻婆豆腐に赤味噌など料理によって種類を使い分ける。

大豆は日本とアジア圏で栽培されている穀物で、豆腐や油揚げ、湯葉、納豆など和食では欠かせない食材。味噌や醤油も大豆が原料というのは言わずもがな。
味噌は、発酵食品としても優秀。塩分濃度が高いと思われがちですが、カリウムを含む野菜と一緒に摂れば心配いりません」
と石渡さん。日本のスーパーにはあらゆる大豆製品が並んでいるので自宅での食事では困らなそうだが、外食はどうしたら?
「居酒屋や定食屋には大豆製品が多いですね。大豆ファーストを考えれば、まずビール!ではなくて、まず枝豆、が私の定番です」
枝豆は若い大豆なので、たんぱく質やイソフラボンの含有量は少ないが、ビタミンAとCを含んでいるので栄養バランスのいい食材なのだそう。

【ルール4】ビタミンA・Cをプラス。

夏はトマトやゴーヤ、冬はカボチャやにんじんなど旬の食材をたっぷりと。

豊富な栄養成分を含む大豆ですが、唯一ビタミンA(ベータカロテン)とCは入っていないんです」(石渡さん)
ホウレンソウやにんじんなどの緑黄色野菜から摂れるビタミンAや、ブロッコリーや果物などに多く含まれるビタミンCを大豆と同時に摂ることで、栄養素のバランスがさらに整う。ただし、ビタミンCは水溶性なので、長時間茹でると失われてしまう。サッと茹でる、もしくは蒸すなど調理法には注意が必要だ。
「大根やカブは、葉っぱにビタミンCがたっぷり。軽く湯がいて刻み、冷凍保存しておけば、納豆にも混ぜたり、味噌汁に放したり、すごく重宝します。にんじんやカボチャなどの色の濃い野菜は、ベータカロテンの宝庫。冬は、なるべく摂りましょう」

石渡尚子(いしわた・なおこ)●跡見学園女子大学 マネジメント学部 生活環境マネジメント学科教授。昭和女子大学大学院生活機構研究科博士課程修了、博士(学術)。大豆と女性の健康について調査・研究。日本人の生活の質を向上させる大豆の新しい取り入れ方を提案している。

『クロワッサン』984号より

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