美保純さんと中井美穂さんが医師に聞く。糖質をコントロールすればもう太らずにすみますか?
撮影・青木和義 スタイリング・小泉美智子(美保さん) ヘア&メイク・HALU(美保さん)、冨永朋子(アルール/中井さん) 文・板倉ミキコ
若い頃と違い、極端な食事法でダイエットをするのは不健康だと実感している大人世代。自分の体が求める食事をしたい女優の美保純さんと、最近体が重くなってきたと悩むアナウンサーの中井美穂さんも、無理なく続けられる正しい食べ方を知りたいというのが共通の思いだ。例えば話題の糖質制限。でも、糖質はやはり美味しさの素。食べられないことがストレスになり、ダイエットに失敗してしまう人が多いのも事実。一方、糖尿病患者を数多く診てきた医師・山田悟さんが提唱するのが、ゆるやかな糖質制限の“ロカボ”。糖質は適正量に制限し、タンパク質、脂質、食物繊維を積極的に摂り、食の楽しさは諦めない。ダイエット以外の美容効果も期待できると聞きつけ、二人は興味津々。賢く食べて太らない方法について学ぶことに。
中井美穂さん(以下、中井) ダイエットに我慢はつきものと思っていましたが、山田先生が勧める糖質コントロールは、食を楽しむことも大切にされているんですよね。
山田悟さん(以下、山田) はい。肥満もそれに伴う病気も、血糖値の高さ、食事前後の血糖値の急激な上下動が問題です。私自身、血糖値が上がりやすい体質ですが、食べることは好き。そこで美味しく食べて健康的になる食事法を研究してきました。
美保純さん(以下、美保) 私は食べたいものを適量、美味しく食べたい人だから、それはうれしい。先生はすごくシュッとした体形で健康そうですもんね。説得力があります!
肌の老化にも影響がある糖。美容のためにも摂取制限は必要。
中井 具体的に高血糖や血糖値の上下動が、体にどう影響するんですか?
山田 太りやすくなる、内臓脂肪が増える、血管が傷つく、高血圧になる、脳卒中といった病気につながることなどは言われてきましたが、最近注目されているのは、(最終糖化産物)です。これは高血糖の悪影響で体内に蓄積した老化物質のこと。AGEsは加齢とともに増加するものなので、健康な人の体内にもありますが、蓄積量は人それぞれ。自分の過去の高血糖による悪影響が体に蓄積され、老化を加速させてしまうのです。
美保 え〜やだ〜。糖質で肌も老けちゃうんですか? 最近私、フェイスラインのたるみが気になるんだけど……。
山田 美保さんの悩みの原因がAGEsとは断定できませんが(笑)。でも、AGEsはイコール肌年齢です。肌や骨の柔軟性を支えるコラーゲンとも密接な関係があって、AGEsが増えるとコラーゲンのしなやかさが失われ、肌にシワが生まれます。糖尿病の人は老化が10年早いと言われますが、AGEsの影響だと考えられますね。
美保 怖い怖い……。では糖質は一日にどれくらいなら大丈夫なんですか?
山田 日本人は平均的に1食100g程度の糖質を摂っています。私たちがおすすめするのは1食20g以上40g以下。糖質をゼロにすることを推奨する方もいますが、それではストイックすぎてつらくなります。ある程度糖質を食べることは楽しみつつ、健康効果の出る摂取量を提案しています。具体的にはおにぎり1個で糖質40gです。
中井 え〜、私すぐアウトです。
美保 私は、お米を食べないと調子が出ない気がするんだけど……。
山田 ゼロにしなくていいので、量を加減しましょう。その代わり、カロリーの高い油脂、タンパク質、食物繊維はたっぷり食べてほしいですね。カロリー制限は必要ありません。
中井 ダイエットしたいのにカロリー制限をしなくていい、というのが驚きです。理由を教えてください。
山田 カロリー制限をすると確かに体重は落ちますが、それは筋肉を削って落ちているだけなんです。
美保 見た目がげっそりしちゃうのね。
山田 そのとおりです。カロリー制限はリバウンドしやすいというデータも出ていて、リバウンドの回数が多いほど死ぬリスクが高くなる、という論文もあります。一方、昨年発表された論文では、糖質の少ない食事をしている人は死亡率が低いことが示されました。カロリー制限や脂質制限には科学的根拠がないのです。実際、ベジタリアンの方は太りやすいという説も。見た目は細く、筋肉は薄っぺらなのに内臓脂肪などの脂肪は多い、“サルコペニア肥満”の方が問題になっています。
美保 そうなの? 馬みたいに人参をたくさん食べていたら筋肉質になって、足も速くなるのかな、なんて(笑)。
山田 面白い発想ですね(笑)。確かに、動物ごとに適した健康食があると思うんです。人間には、糖質をコントロールした食事が合っています。