八神純子さんが実践する、若々しくハリのある声を保つ、 かんたん呼吸トレーニング。
撮影・清水朝子 文・嶌 陽子
八神さんが実践している、深く腹式呼吸する方法。
深い呼吸を心がけ、お腹から声を出す。これを毎日続けることが健康な身体をつくり、それによってさらに豊かな声が生まれる。八神さんの日々の習慣が、好循環をもたらしているのだ。
張りのある声を保つために、日頃からしていることを聞いてみた。サプリメントには一切頼らず、栄養は日々の食事から。野菜は多めに、たんぱく質や炭水化物もしっかり摂る。もちろん、食べ過ぎには注意。食べ物を無駄にしたくないので、お店で注文する時に「少なめで」とお願いしたりスタッフに分けて食べてもらうことも。
「外から帰るたびに、ぬるま湯と塩を使った“塩うがい”も続けています。『エー』と喉の奥で言うイメージでうがいをすると、しっかり奥までうがい液が届きますよ」
それでも、「今日は声があまりぱっとしないな」と思う日も。そんな時は、意識して笑顔をつくって歌う。すると、いい声が戻ってくる。
「心も軽くなるし、まわりも私の歌を聴いて、いい気持ちになってくれる。不思議と全てがうまく回り出すんです」
重ねてきた人生が自分だけの“声の色”になる。
若い頃の自身の声には「艶がなかった」と振り返る。
「だから、少し陰のあるような失恋の歌などには合わなかったんです。当時は、歌える歌の幅が狭かったですね」
年を重ね、また、トレーニングによって声域も広がった。さらに、これまでのさまざまな人生経験が、声を変えていった、と話す。
「それまでの経験や、その時の感情など、人それぞれの“声の色”に人生が表れると思うんです。たとえば、ひどく落ち込んだ後、上を向いてまた頑張ろうと一歩を踏み出す。そんな時の声は、いちばん艶がある気がします」
東日本大震災の被災地を定期的に訪問して歌っているほか、病院でのミニコンサートも続けているという八神さん。歌を聴いた人から、「気づいたら、また頑張りたくなっていた」などと言われるのが何よりうれしい、と笑う。
「人間同士、声から感じ取るものは必ずあるはず。私の声から何かを感じてもらえたらと思いながら、いつも歌っています」
’80年代半ばからアメリカで暮らすようになり、育児にも奮闘した。そうした生活から得たものも、声に生かされている。
「向こうの女性たちを見てきて、強く感じたことがあります。それは、子育てを終えた後、その知見を生かして、第二の人生をどう輝かせるかを真剣に考えている人が多いということ。私が本格的に歌手活動を再開したのも、彼女たちの姿に触発された部分は大きいです。そうした生き方も、私の活動を通じて伝えていけたらと思いますね」
「年を重ねるごとに、自分のベストを極めたい」と話す八神さん。いくつになっても自分や自分の声が持つ可能性をあきらめない。今の自分の声を好きになる。そんな前向きな気持ちがあるからこそ、彼女が歌う歌は聴く人の心に届くのだろう。
八神純子(やがみ・じゅんこ)●’78年デビュー。現在、『八神純子Live キミの街へ〜Anniversary Ye
ar』全国ツアー中。http://junkoyagami.com/
『クロワッサン』978号より
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