【後編】ずっと自分の歯で食べたいから、信頼できる歯科医選びのポイント。
撮影・中島慶子 イラストレーション・安ケ平正哉
歯を失った場合は? 3つの選択肢の利点と欠点を解説。
虫歯や歯周病を悪化させて、抜歯をした際には、その後にどのような処置法があるのか。歯科医が提示するのはブリッジ、入れ歯、インプラントの3つが主になる。
「歯は歯列弓に沿って半円状に隙間なく並ぶことでそれぞれの歯にかかる力を分散して、壊れることを防いでいます。1本の歯を失うと、その歯が負担していた噛む力を残った歯で埋め合わせることになります。さらに抜歯した部分を放置しておくと、抜いた部分の両隣の歯は徐々に横に傾いて、噛み合わせが悪くなったり、下の歯を抜いた場合は、その上の歯が伸びてくるなど、さまざまなトラブルが起きます」
ブリッジは、抜歯した部分の両側に健康な歯がある場合に適応するだ。入れ歯と比べて取り外ししなくてよいことや、形態が歯を失う前に近く、噛み合わせの感覚も大きく変わらないので、異物感が少ない利点がある。ただし、問題点もある。
「両隣の歯を支台にするため、たとえ健康な歯でも、削らなければいけません。歯を削ると、虫歯になるリスクは格段に高まります。また、ブリッジをかけた歯の下には食べ残しがたまりやすく、これが歯周病の原因になります」
入れ歯(義歯)は、自分の歯が残っている場合に装着する部分入れ歯と、歯が全く残っていない際に使う総入れ歯がある。部分入れ歯は、歯のない部分に人工歯がついた床(レジンというピンク色の樹脂や金属が使われる)などをのせ、クラスプと呼ばれるバネを残っている歯に固定する。総入れ歯の場合はクラスプを使うことができないので、口蓋などに吸着させる。
「きちんと合う義歯であれば、適切なメンテナンスが行われている限りは自分の歯のように噛めます。ただし、精度が低いものだと、クラスプがかかった歯がぐらついて噛みづらかったり、義歯の周辺にある歯の手入れがうまくいかず虫歯になったりします」
最近注目を集めるインプラントは、抜歯した部分の歯槽骨にネジ(人工歯根)を埋め込み、アバットメントという支台を装着。その上に人工歯をかぶせる。歯根がない入れ歯と違って、顎の骨に固定するので違和感がなく、自分の歯を取り戻した感じがする人もいる。ただし、インプラントはすべての人に推奨できる方法ではないと齋藤さんは言う。
「歯槽骨にネジを埋め込むので、顎の骨が細く、歯槽骨が薄い方はネジを入れることができない場合があります。また、歯周病が進んでいる人にも適しません。インプラントは歯肉を貫いて骨の中に刺さっているので、いわば指に刺さったトゲのようなものです。傷口が外部に開放された状態ですから、歯周病菌は侵入しやすい」
インプラントを長く持たせるには歯科医による定期的なケアも必要になる。
「インプラントにすれば一生持つ、と考えて、治療される人も多いと思いますが、術後のケアがうまくいかないと残っている自分の歯より、先に抜けてしまう事態になります。インプラントを考えるなら、まずは口腔ケアをしっかりできるようにして、しかも、ほかの治療法も説明してくれる歯科医院を選ぶべきです」
抜歯した後の3つの処置方法
[ブリッジ]
失った歯の両隣の歯を支台にして橋をかけるように接着するかぶせもの。歯が数本続けてない場合はより大きなブリッジになる。入れ歯と比較して取り外さなくてよいことや形態が抜歯前に近く、異物感が少ない利点がある。反面、支台となる歯が健康な状態でも削る必要がある。
[入れ歯]
失った歯に代わる取り外し可能な義歯。自分の歯が残っている場合は歯のない粘膜部分にのせる(樹脂、あるいは金属製のもの)と、健康な歯にクラスプと呼ばれるバネを引っ掛けて固定するもの(レスト)を使って装着する。歯が残っていない場合は床を口蓋等に吸着させる。
[インプラント]
人工歯根(デンタルインプラント)を歯を失った部分の顎の骨(歯槽骨)に埋め込み、その上に人工歯をかぶせる。天然歯と同じぐらい違和感なく噛めるが、費用が高く、歯周病になっている人には不向きだったり、天然歯以上にきめ細かいケアが必須となる一面もある。
広告