からだ

唾液があまり出ないのは、加齢が原因ではありません。

  • 撮影・岩本慶三 イラストレーション・川野郁代、山下カヨコ

加齢だけで唾液は減らない! なのに出にくくなってしまうのは、なぜ?

年齢を重ねるごとに、唾液が出にくくなっている気がする。最近、ビスケットやパンがなかなか飲み込みにくくて……これってやっぱり年のせい? そう思いがちだけれど。実は、単純に加齢のせいだけで唾液が出にくくなるというわけではない。
「機能低下さえ起こさなければ、60歳でも20歳と変わらず唾液は出てきます。実際に、私の患者さんで、唾液の心配とは無縁な100歳の方がいました。年齢よりもむしろ問題なのは周囲の環境。たとえば、毎日職場で上司に怒られてばかりという環境では、出るものも出なくなってしまいます」

職場の環境が唾液の出方と関係があるの?と思うが、唾液は自律神経とも密接な関係があるという。ストレスなどを受けて交感神経が強く働くと、サラサラとした唾液がネバネバとしたものに変わってしまうのだ。そして、それは外から受けるストレスばかりに限らない、というのが恐ろしいところ。
「もともと50歳を過ぎると、意識的にそうしない限り、副交感神経が優位に立ちにくくなります。他人の話に耳を傾けることができない、フレキシブルに対応できない、そんな兆候が出てきたら気をつけたほうがいい。相手が自分と異なる主張をしても、そういう意見もあるんですねと、いったん引き取って客観的に考える気持ちがないと、副交感神経は優位になりません」

年を経て思考の柔軟性が失われると、唾液が出にくくなってしまうということに。自律神経が唾液に及ぼす影響は見逃せない問題だ。また、生活習慣を一度きちんと見直すことも、年齢にかかわらず口中を唾液で潤す秘訣。
「唾液が出にくくなるのは、ほかにも理由があります。年をとると、だんだん人と会っておしゃべりしなくなったりしがち。そうすると、舌を動かさなくなる。また、若い頃のように何でも食べられなくなり、食事の量や回数が減ることでそしゃくの回数も減ってしまう。単なる加齢ではなく、こうした習慣が原因になっているのです」

また、柔らかいものばかりを選んで口にするのも、唾液の分泌が少なくなってしまう一因なのだという。
「おいしいものは柔らかいもの、という風潮もよくない。ステーキも調理の工夫で柔らかく食べることができてしまう。子どもも硬い食べ物は口から出してしまいますから」

だからこそ、食べ物を意識的にゆっくり味わいながら噛んで、普段から自力で唾液を出すようにすることが大事。唾液分泌は人との関係性や食生活と密に関わっているのだ。

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