同室派? 別室派? パートナーとの寝室問題。
撮影・中垣美沙 イラストレーション・KAZMOIS 文・澁川祐子
別室派はどこか1カ所、つながる場所をつくる。
別室派で多いのは、子どもが独立し、余った子ども部屋をリフォームして、それぞれ自分の部屋兼寝室を持ちたいというケース。中でも丹羽さんの印象に残っているのは、身のまわりのことが何ひとつできない夫のことを案じ、「自分のことは自分でできるようになってほしい」という理由で別室を依頼してきた妻の例だ。
「ご主人は、今まで洗濯物ひとつ畳んだことがなく、自分の下着がどこにあるかもわからないという人。自分が先立ったら困るだろうからと、クローゼットもそれぞれの寝室につけ、自分の荷物は自分の部屋で完結するような間取りにしてほしいと依頼されました」
妻から一方的に寝室を分けたいというと、冷たいようにも感じるが、こうした思いやりの表れであることもあるのだ。
ただ別室にする場合、ひとつ気をつけておきたいのは「どこか1カ所、つながる場所をつくっておくこと」だという。
「高齢であれば特に、突然気分が悪くなることもあり得ます。何かあった時、異変に気づくことができるよう、壁で完全に仕切ってしまわないことが大切です」
たとえば部屋の入り口をドアではなく引き戸にして、必要に応じて開けて空間をつなげられるようにしておく。あるいは気配が感じられるように、壁やドアに小窓などの開口部を設置する。別室の場合は、逆につながることを意識した工夫が必要なのだ。
同室であれ、別室であれ、結局焦点になるのは、お互いにとって心地いい距離の取り方。
「二人ともが賛成しないと、なかなか思ったとおりの寝室は実現できないでしょう。相手への気遣いを忘れず、二人の要望を地道にすり合わせていくことが快眠への第一歩です」
別室のよくある悩みと解決例。
丹羽 修(にわ・おさむ)●NLデザイン一級建築士事務所代表。一級建築士。住む人の目線を大切に、住宅設計を手がける。著書に『家を建てたくなったら』(WAVE出版)。
『クロワッサン』977号より
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