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心臓の専門医に聞く、「心不全」のサインと心臓を守るためのQ&A

  • 撮影・中島慶子 文・及川夕子

症状が出る前から手を打って、心不全パンデミックに備えよう。

こんなことが心不全のサイン。2つ以上該当したら、循環器内科やかかりつけ医を受診して相談を。出典:日本心不全ネットワーク、大塚製薬

日常生活のなかでも心不全のサインは出ている。上に挙げたチェック項目で2つ以上に当てはまることがある場合は「隠れ心不全」の可能性があると佐藤さん。

「病態としてはどんな心不全も、肺水腫(息切れ)、体液貯留(むくみ)、低心拍出(だるさ)の3つに集約されます。たとえば“横になると息苦しくて、起きていると少し楽になる”人の場合は心臓に戻る血液が、肺に停滞することから起こります。これらの症状に気づいたら、かかりつけ医や循環器内科などを受診しましょう。また、健康診断で数値などで何か指摘をされたら、『これは心不全に関係がありますか?』と医師に尋ねてみるのもいいですね。こうしたことは、日ごろから心臓に関心を持っていないと、なかなかできません。自分もなり得る病気と捉えて将来の心不全を予防し、発症や再発しないように心がけましょう

心不全の症状・兆候は3タイプ

一般に、心臓の働きは高齢になるほど低下していく。それに心臓の病気や高血圧などの生活習慣病が加わると、さらに悪化していき、長い年月をかけて心不全へと進行していく。

「最近は、心筋梗塞で入院してから亡くなる人は5〜6%まで下がってきました。むしろこれからの課題は、病気になった後のケアになります。一度心不全を起こすと、心臓の機能は急激に悪化します。急激に悪化した心臓の機能は元に戻ることは難しく、通常は、退院した後も薬物治療を継続し症状をコントロールすることが必要です。その間、不摂生をしたり、治療を怠ると、再発を繰り返して、ついには命の危険が増してしまうことになります」

日本では、こうした心臓に関する理解がなかなか広まらないことから、佐藤さんら循環器専門医は、今までにない危機感を感じているという。
日本では今、心不全の患者数が急激に増えています。一番の原因は急速な高齢化。団塊の世代が75歳以上になる2025年までは患者数がどんどん増え続け、病院で患者さんを受け入れられなくなると予想されています。このような状況は『心不全パンデミック』とも呼ばれています」

心疾患の年齢階級別総患者数。高齢化に伴い、日本における心不全患者は、2025年まで増え続けると見られている。出典:厚生労働省 平成26年度患者調査

幸い、心不全は未然に防ぐことができるという。
症状がなく心不全と気づかない『隠れ心不全』の段階から適切に対処することが最も重要です。まず、生活習慣病はどれも多かれ少なかれ心臓に負担がかかります。特に高血圧は、成人の2分の1に見られる罹患率の高い疾患です。これを心不全のスタート地点と考えて、予防・改善に努めましょう」

血圧が高くなると、血管が硬くなり血液の流れが悪くなる。すると、心臓はより強い力で血液を送り出そうとするため、心臓の壁が厚くなっていく。これが心肥大といわれる状態。心肥大になると、厚いゴム風船が膨らみにくいように、心臓がうまく拡張できなくなり、血液を充分溜められず、送り出す血液の量も減ってしまう。

また、動脈硬化が進むと、心筋梗塞から急性心不全を起こすこともある。いずれにしても、血圧管理はしっかりと行いたい。心臓の病気を知るQ&Aをしっかりチェックして、疑問・不安を解決しておこう。

佐藤直樹(さとう・なおき)●日本医科大学 武蔵小杉病院 循環器内科部長。日本医科大学医学部卒業。専門は心臓の病気の診断、治療。心不全予防の啓発活動にも力を入れている。

『クロワッサン』976号より

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