からだ

砂糖の代替品ではなく 実は砂糖が代替品? はちみつは栄養素の宝庫。

  • 取材・文/石飛カノ 撮影/森山祐子 写真、データ協力/山田養蜂場

「お砂糖に比べてやさしい甘さ」 「隠し味に使うとほっこりした甘みが楽しめる」  

口にすると甘いというだけで、これまではちみつは、「砂糖のかわりに使用すると美味な甘味料」という立場に甘んじてきた。けれど実際、砂糖が世界史に登場したのは紀元前4世紀、アレキサンダー大王がアジアに遠征したときのこと。 記述には、「インドには、ハチの力を借りずに葦(あし)からとれる蜜がある」とある。「ハチの力を借りた蜜」とはもちろん、はちみつのことで、「葦からとれる蜜」はサトウキビのこと。つまり古代ギリシャやエジプトでは、砂糖よりずっと以前からはちみつを口にしていたのだ。  

はちみつ自体のルーツは紀元前4世紀どころの話ではなく、もっと前に遡る。狩猟採集時代から利用されていたことが当時の壁画にも残っているし、さらにいえば、ミツバチが今のような形の生き物として存在するようになったのは、人類が誕生する前の約500万年前とも言われている。 「砂糖のかわり」というのは失礼な話で、砂糖こそが「はちみつのかわり」というべき順番間違い。

蜜や花粉に含まれるさまざまな栄養素。

さて、もうひとつの誤解も解いておきたい。それは、はちみつが単なる甘味料ではないということ。精製された砂糖に含まれる成分はそのほぼすべてが糖質。  
これに対して、はちみつに含まれている糖質はおよそ80%、残り20%は水分。前ページでご紹介したように、この構成バランスは、ミツバチが一生懸命羽ばたいて水分を飛ばしてできあがった黄金比。  
そして少量の花粉が含まれた蜜の中には、さまざまな栄養素が含まれていることが分かっている。  
山田養蜂場 養蜂部顧問の藤善博人さんによれば、 「花蜜(かみつ)からはちみつが作られるときに新たな栄養素が加わるわけではありまん。ただ、花蜜の主成分のショ糖がミツバチの酵素によってブドウ糖と果糖に分解されるだけで、それ以外の栄養素はすべて花粉や蜜に含まれているものです」  
主成分の果糖、ブドウ糖、麦芽糖のほか、体に有用なグルコン酸やクエン酸といった有機酸、抗菌物質を作り出す酵素、体内の化学反応を促すビタミンやミネラル、体の構成材料となる各種アミノ酸、そして植物に含まれるさまざまなポリフェノール。  
下のリストは、そのほんの一部。一説にははちみつに含まれる天然成分はおよそ180種類とも言われていて、ひょっとすると、まだ発見されていない特別な成分が含まれている可能性もある。  
まさに、はちみつは栄養素の宝庫。砂糖がわりの甘味料として使うだけでは、あまりにももったいないということ、お分かりでしょう?

信頼できるはちみつメーカーでは、水分の割合、果糖やブドウ糖の割合など成分の品質確認を行っている。

はちみつに含まれる栄養素

糖:体を動かすエネルギー

・グルコース▶︎エネルギー源となる糖質の最小単位のブドウ糖
・フルクトース▶︎甘みが強くエネルギーとして代謝されやすい果糖
・マルトース▶︎ブドウ糖が2つ結合した麦芽糖

有機酸:酸の性質をもつ化合物

・グルコン酸▶︎ビフィズス菌を増やし腸内環境を整える
・クエン酸▶︎エネルギー生成の回路の働きを促す

酵素:抗菌作用をもたらす

・α-グルコシダーゼ▶︎ショ糖を果糖とブドウ糖に分解する
・グルコースオキシダーゼ▶︎ブドウ糖からグルコン酸と過酸化水素を作る

ビタミン:体の調子を整える

・ビタミンC▶︎造血作用、免疫力補強、老化防止
・ビタミンB1▶︎糖質の代謝を促す
・ビタミンB2▶︎脂質の代謝を促す
・ビタミンB12▶︎赤血球の形成を助ける
・ナイアシン▶︎皮膚の健康を保ち、消化を促進

ミネラル:体を作り生体機能を調節

・ナトリウム▶︎心臓、筋肉の調整
・リン▶︎骨や歯、筋肉を作る
・鉄▶︎赤血球の形成を促す
・カルシウム▶︎骨や歯を作る
・カリウム▶︎ナトリウムの排出を促して血圧を調節する
・マグネシウム▶︎タンパク質の合成、エネルギー代謝を促す
・銅▶︎鉄と協力して赤血球の合成を促す
・亜鉛▶︎タンパク質の合成、骨の発育に関わる
・マンガン▶︎生殖と成長を正常化する

アミノ酸:肌、髪、筋肉の材料

・バリン▶︎タンパク質を合成する
・ロイシン▶︎筋肉を維持する
・イソロイシン▶︎筋肉を作り、ヘモグロビンを形成する
・アラニン▶︎エネルギーとなる糖質に変わる
・アルギニン▶︎成長ホルモンの分泌を促す
・リジン▶︎脂肪をエネルギーに変える物質の材料
・アスパラギン酸▶︎神経伝達物質の合成に関わる
・グルタミン酸▶︎老廃物の解毒に関わる
・プロリン▶︎コラーゲンの材料になる
・スレオニン▶︎成長促進に関わり脂肪肝を抑制する
・メチオニン▶︎タンパク質を作るときに最初に働く
・ヒスチジン▶︎ヘモグロビンや白血球の合成に関わる
・フェニルアラニン▶︎脳内神経伝達物質の材料
・チロシン▶︎脳内神経伝達物質やホルモンの材料
・グリシン▶︎コラーゲン、赤血球の材料
・セリン▶︎さまざまな酵素に含まれる

ポリフェノール:体を守る植物の天然成分

・カフェ酸、ρ-クマル酸、フェルラ酸、ケンフェロール、クリシン、ケルセチン、p-ヒドロキシ安息香酸、バニリン酸、バニリン、シリングアルデヒド、ガランギン ▶︎植物に含まれる化合物で強力な抗酸化作用が期待される

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はちみつの“薬効”を最大限に生かす、具体的な方法をシーン別に紹介します。
さあ、今日から「はちみつ生活」始めましょう!

お話を伺ったかたがた
・中村 純さん 玉川大学ミツバチ科学 研究センター教授
・前田京子さん エッセイスト ベストセラー『ひとさじ のはちみつ』著者
・藤善博人さん 山田養蜂場 養蜂部顧問
・鳥家恵莉さん 山田養蜂場 サブチーフ

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