以上のようなメカニズムが背景にあるため、「ワキの多汗症対策は、予期不安を取ることから始めなくてはなりません」(五味さん)。どんな方法があるかというと……。
①開き直り療法(ロゴセラピー)
眠れない夜に、眠ろうとすればするほど、目が冴えてしまうということはありませんか。強すぎる欲求は、ときに逆効果になることも。
だから、「汗が出そうになったら、『努力家だから出る汗なのだ。いい汗なのだから、出てもいいわ』と開き直ることです。抑えよう、止めようとすると逆効果。『汗が出てもどうってことない』という気持ちになることが大切です」と五味さん。あえて〝逆を行く〟ことで、緊張を遠ざけるのですね。これはれっきとした心理療法です。ぜひ試してみてください。
②制汗剤を上手に使う
「制汗剤で汗が抑えられれば、汗を意識しなくなり予期不安を取ることができます。制汗剤は〝安心剤〟や〝自信回復剤〟としても働いてくれます」と五味さん。ちなみに、ワキ汗は蒸発しにくく体温調節には影響しないので、止めても全く問題ないそうです。制汗剤は市販のものでOK。効果を得るには使用方法をきちんと守りましょう。または、多汗症の悩みで皮膚科を受診すると、制汗剤を処方してもらうこともできますよ。
③ボトックス治療
多汗症の治療法はいくつかありますが、五味さんが「精神性発汗型の多汗症に対して、最も簡単で確実な治療法」と断言するのが、ボトックス治療です。「無毒化したボツリヌス菌を腋窩の皮下に注入し、発汗を促進させる神経伝達物質を抑制します。早ければ、翌日〜3日ぐらいでワキからの発汗が止まります」
ボトックス治療効果は永久ではなく、効果を持続させるには、年に1〜2回の注射が必要。でも、中には一回の注射で多汗症が治まる人もいるそうです。それは、「汗が止まって安心し、予期不安が消えるため」と五味さん。
また、汗腺は使わないでいると、だんだん発汗機能が弱くなっていくため、ボトックス治療を何回か続けるだけでも、汗の量が減ってくる可能性は十分あるそうです。