お米を中心にした和食が、 日本人の胃腸を元気にする。
撮影・小出和弘
「遺伝的に善玉コレステロールが多いこと。伝統的に魚を多く食べてきたので、血液中にEPAとDHAが多いこと。この2つの理由から、日本人は欧米人に比べ動脈硬化にはなりにくいと言えるでしょう。それから、日本人の腸にはもともとビフィズス菌をはじめとする善玉菌が多いのです。腸内環境がきれいなことが、日本人の寿命の長さや肥満率の低さと関連している可能性も指摘されています」
腸内環境を整えることの必要性が広く知られるようになったが、もともと日本人の腸内環境は悪くはないのだ。
「でも、安心は禁物です。先ほど体質について説明しましたが、体質は生活習慣や環境によって変わります。長年日本人が守ってきた食習慣がくずれてきた今、どんな食生活を送るかは非常に重要です」
さらに奥田さんによると、そもそも日本人と欧米人の胃ではその形自体が異なるという。
「欧米人の胃は壁が厚く、胃酸をしっかり分泌でき、食べ物を速やかに押し出して、たんぱく質や脂肪を腸で消化するのに適した形をしています。一方、日本人の胃はたいてい釣り針のようで、食物繊維が豊富な穀類をしっかり溜め込み、砕いてどろどろにして消化するのに適した形です。また、腸に炭水化物からエネルギーを引き出すのに役立つ菌が多くすんでいるのも日本人ならでは」
つまり、胃と腸はそれぞれの人種の伝統的な食生活によってそれぞれに適した形や環境になっているというのだ。
それでは、穀類と魚中心の伝統的な和食から、ごはんを食べずに脂肪たっぷりの肉をたくさん食べ続けた場合、胃腸環境はどうなるのだろう。
「日本人の胃腸は脂肪やたんぱく質、とくに脂肪を消化するのが苦手です。脂肪分の多い食事が続くとそれが長時間腸にとどまるため、便通が悪くなり便秘に。さらに、日本人の弱点である内臓脂肪の増加にも直結してしまいます」