からだ

Vol.9 口が渇いてしかたありません。【40歳からのからだ塾WEB版】

更年期からのHRTでシェーグレン発症を予防できる可能性がある?

今回取材した宮地さんは、更年期障害の治療のために行うホルモン補充療法(HRT)をシェーグレン症候群の発症を抑えるための予防的治療に活用しています。
本当にHRTで発症を抑えられるのでしょうか?
その理由を聞きました。

女性が多く発症し、かつ閉経後世代に発症する人が多いシェーグレン症候群。中には血液検査で陽性と診断されても、自覚症状のない無症候性シェーグレン(隠れシェーグレン)」の方がいるそうです。
「シェーグレン症候群などの膠原病は、遺伝子と外的要因によって(発症の)準備状態となりますが、免疫異常が起きていても発症しないことがあります。病気のもとはできていて、そこにエストロゲンの低下が加わると、準備段階でとどまらず刺激が増幅され、自己免疫現象を誘導してしまうケースがあるのです」と宮地さん。

実際にこんな症例があったそうです。
「43歳の女性患者で、血液検査でシェーグレン症候群陽性。汗が出る、動悸がするといった更年期の症状だけが出ていたので、ホルモン補充療法(HRT)を1年行った。その後、HRTを3ヵ月間やめたところ、動悸、発汗、さらには口が乾く、目が乾くという症状が出て、シェーグレンを発症。HRTを継続していたら発症を予防できた可能性があります」(宮地さん)

こうした臨床経験から、宮地さんは、「無症候性シェーグレン」の患者さんには、更年期の時期にホルモン補充療法(HRT)を勧めているそうです。
「男性のシェーグレン症候群や全身性エリテマトーデス(SLE)など、エストロゲンに関係なく起こる自己免疫疾患も中にはあります。ただ、やはり忘れてはならないエストロゲン低下の作用は、女性のカラダの免疫システム亢進に非常に関与していること。HRTの予防的投与が行われるようになれば、更年期のつらい症状がとれるばかりか、女性に多い自己免疫疾患は大きく減る可能性があります」と話していました。

女性に多い自己免疫疾患について、そしてホルモン補充療法という予防法があることを知っておいて損はありません。
この分野の研究が、今後さらに進展していくことを期待したいです。

今回のまとめです。

口の渇いて仕方がないときに行くべき医療機関は

症状がドライマウスだけ → 口腔外科や歯科、ドライマウス外来へ

口だけでなく、目、肌などカラダのあちこちが乾燥したり、疲れやすい → 内科や膠原病専門外来へ

更年期のホルモン補充療法(HRT)がシェーグレン症候群の発症を抑える可能性がある

ご協力いただいた医師

宮地清光さん

慶宮医院院長、日本リウマチ学会専門医
みやち・きよみつ●内科医、医学博士。膠原病の専門家で、更年期医療についても造詣が深い。関節リウマチ、シェーグレン症候群、更年期障害などの鑑別診断に先見的に取り組む。

※症状や治療法には個人差があります。必ず専門医にご相談ください。

ライター、メノポーズカウンセラー 及川夕子
更年期まっただ中のライター。最近、ちょっと休んだぐらいでは疲れが抜けなくなってきて、以前よりもカラダのメンテが欠かせなくなったと実感。とはいえ、カラダの変化をポジティブに捉え、同年代の女性の健康に役立つさまざまな情報をお伝えしていきたいと思っています。ただいま、ヨガやマインドフルネスを実践中。ホルモン補充療法もしてみたい!
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