青山着物部主宰、着付け師・青山アキコさんの着物の時間──「着物を通して装うことの楽しさや日本の伝統文化の魅力を伝えたい」
今回の「着物の時間」は、「青山着物部」を主宰し、着物スタイルアドバイザーとしても活動する、三代目花柳寿楽夫人の青山アキコさん。
撮影・青木和義 ヘア・親川ありあな（marlee） メイク・桂木紗都美 着付け・小田桐はるみ 文・大澤はつ江
新しく生まれ変わった古裂の帯は、どんな着物でも引き立ててくれます
柳が美しい銀座の小路を、絽の付け下げで涼しげに歩く青山アキコさん。藤色に撫子（なでしこ）、藤、桔梗など、四季折々の草花を丸い形にまとめた「花丸文（はなまるもん）」に水の流れを描いた上品な着物。そこに合わせた黒地の絽の名古屋帯が全体を引き締める。
「帯は夫の母が作ってくれたものです。義理の祖母の大切な古裂（こぎれ）コレクションの中から、私に似合うものをデザインして仕立ててくれました。いわばアップリケですね。このほかにも古裂を使った帯はたくさんあります」
下の帯も古裂を縫いつけたものだ。
「どれも一針一針丁寧に刺された刺繡が美しく、職人さんたちの思いが感じられ、締めているだけで豊かな心持ちになります」
着物関連の仕事のほかに、日本舞踊家・三代目花柳寿楽（はなやぎ・じゅらく）の妻の顔を持つ青山さん。家族の健康管理はもちろん、舞踊公演などでは着物で会の運営、関係各所や来場者への挨拶など、多岐にわたりサポートを行う。
「最初は右も左もわからず、たくさんの方々に教えていただきながら必死で動いていました。今は着物を着ることが多い毎日ですが、実は結婚するまで着物を着たのは数回ほど。全く無縁だったといってもいいかもしれません。きれいな着姿を目指して、手探りでした」
試行錯誤するうちに自分にあった着物や楽しみ方がわかってきた。
「似合う柄や色はなにか、ルールがわかるようになってきました。私には大きな柄が似合わず、少し余白があるくらいのバランスがちょうどいい。色は茶系が似合わない。似合う色や柄を着ると顔が引き立ち、全体が明るく調和します」
自分に似合う失敗しない着物を見つけるためのアドバイスをお願いすると、
「似合うものを知ることも大切ですが、自分としっかり向き合って、絶対に似合わない色や柄、素材を心に刻んでおくことだと思います。義母からは、あててご覧なさい、と何度も言われ、常に客観的な視点で反物を選ぶことの大切さを教えてもらいました。もちろん、まわりの人の意見も重要ですが、今の気持ちにピタッとくるものがないときは今回は縁がなかった、と諦めることも肝心です」
また、季節感、自分の立ち位置や着物を着る目的などを明確にしておくことも大切だ。そしてもうひとつ、自身の体形を知ることが重要、と青山さん。
「体形は人それぞれ。洋服と違い、着物の形は一通りですから、体のラインを着物仕様に整えればいいんです。体形に合った補正や着付けをすることで着姿は本当に見違えます。私は着物体形ではないので本当に苦労しています。衿の抜き加減ひとつで着姿をデザインできるのが着物なんだと思います」
青山さんの美しい着付けを見て、着物を着てみたい、と友人たちが集まってきた。
「4年ほど前から着物を楽しむ紹介制サロン『青山着物部』を立ち上げ、その方のライフスタイルに合った楽しみ方を伝えています。着物を通して装うことの楽しさを伝えられたらいいな、と思っています。着物を持っていないとか、忙しくて教室には通えない、箪笥の肥やしをコーディネイトできない、などハードルを上げている悩みなどを全力でサポートするのが『青山着物部』なんです」
着物を着る機会を催し、食事をしながらおしゃべりをする。年代、職業を超えての交流が学びになる。いわば頑張らない大人の部活動だと。
「着物には魅力がたくさんあります。絵柄で四季を感じられることもそうですし、なにより、自身が美しく楽しくなれる。着物を着たときのウキウキした気持ちを、いろいろな方たちに、ぜひ感じてほしいです」
『クロワッサン』1146号より
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