運動が苦手な人ほど試してください フレイルのチェックと日常習慣での防ぎ方
撮影・黒川ひろみ イラストレーション・鈴木衣津子 文・石飛カノ
健康な状態から、要支援・要介護状態に至るまでの瀬戸際の状態を「フレイル」と呼ぶ。加齢によって、体と心、両面の活力が以前より低下してしまうことを指す。
「フレイルにはさまざまな概念が含まれますが、このうち身体的フレイルの予防がひとつのカギになると思います」
と言うのは、運動器の治療に携わる「ゆりクリニック」院長の矢吹有里さん。
「運動を始めると、生活が送りやすくなって外出したり、社会参加をする機会も増えます。人と交流すると認知機能の衰えを防ぐこともできますから、そういう意味では要介護状態を遠ざけることも可能です」
フレイルは、健康な状態から寝たきり生活に移行するまでの過渡期。ここで何らかのアプローチをすれば後戻りできるというのが最大のポイント、と矢吹さんは言う。逆に何も手を打たなければ、要介護状態まで進行し、その後は後戻りできる術はないということ。
「うちでは整形外科の診療を中心にやっていて、全然運動していない方が腰痛やひどい肩こりを訴えてくることもあります。すると、リハビリ中は、みなさん運動するんですが、リハビリ後に運動をやめてしまう方が少なくありません。でも体を動かすことは、人生や生活を思うように続けていく上で実は一番大切なことなんですよ」
フレイルという言葉は知っているけれど、まだ先の話、と思ったら大間違い。行動を起こすのは今が最後のチャンスかもしれません。
フレイルってどんな状態?
筋肉量が減少する〈サルコペニア〉や運動器の機能低下を指す〈ロコモティブ・シンドローム〉といった言葉と混同されがち。だが、実はフレイルはもっと広義。
「身体機能の低下だけでなく、社会的な活動の低下や、精神機能の低下からもフレイルは始まります。例えば仕事を退職された方が家に閉じこもり、家族としか交流しない。そうした生活によって認知機能がどんどん衰えていくなど、いろいろな面からの全体的な加齢による衰えがフレイルです」
このバランスが崩れるとフレイルに!
どんな人が要注意?
加齢による衰えといっても、何歳以上でフレイルになるという確かな線引きはない。50代でフレイルに近い人もいれば、70代で元気な人もいる。では、どんな人がフレイルに陥りやすいのか?
「第一に、運動習慣がないという人や、筋力が乏しい痩せ型の人が挙げられます。また、趣味を持っていないという人も社会的な参加が少なかったり、認知機能への刺激が不足しがちです」
下のチェックでひとつでも当てはまる項目があったら、早めに生活を見直したい。
当てはまる人はすぐに対策を!
【身体機能】
◻︎運動をしていない
◻︎痩せている(痩せてきた)
◻︎歩くのが遅い
◻︎ペットボトルの蓋が開けられない
【社会機能】
◻︎趣味がない
◻︎週1回も外出していない
◻︎何日も人とご飯を食べていない
【精神機能】
◻︎常に疲れている
◻︎今まで楽しんでいたことが楽しめなくなった
◻︎毎日の生活に充実感がない
◻︎ふくらはぎが痩せてきていないか
◻︎靴下が履けない
◻︎ちゃんとしゃがめない
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