理学療法士に聞く、足の骨格が崩れる原因とセルフチェック。
放っておくとどうなる? 改善の方法は?
土台を整えれば姿勢もスッキリ、正しく美しく歩くことだってできる!
撮影・青木和義 スタイリング・白男川清美 ヘア&メイク・大谷亮治 モデル・nozomi イラストレーション・浅妻健司 体験談コラム文・嶌 陽子 構成&文・堀越和幸
足元の乱れはなぜ姿勢に影響する? 専門家の考える理由。
首、肩、腰が整っても、土台の足が乱れていたら元も子もない。単純な話、足場の悪い砂利道や坂道では私たちの姿勢はすぐに崩れてしまう。
「それを“上行性運動連鎖”と呼びます。たとえば、足首が内側に倒れれば、膝も内側に入り、骨盤が前に傾く、というように人間の体にはある部位の動きを他の部位の動きで補正するという働きがあり、これは姿勢に影響します」と、理学療法士の宮澤俊介さん。
もちろん、足場が悪いという一過性の理由ならすぐに元に戻るが、問題は足の骨格そのものに問題があるとき。
「極端な猫背、突き出たお腹、そして骨盤後傾の姿勢をスウェイバックと呼び、近頃増えていますが、一つの原因にはやはり土台の足があると思います」
それでは足の何が問題なのか? 具体的に見ていこう。
歩行時にしている「回内」という動き。 これが過剰になると足は……。
二足歩行の人間の足は、着地する瞬間に、心持ち踵を外側に傾けながら足部の剛性を高め足裏で地面をとらえにいこうとする。この動きを“回外(かいがい)”と呼ぶ。接地した直後は踵は内側に傾き(この動きを“回内(かいない)”と呼ぶ)、蹴り出し時には再び回外の動作を行う。
「無意識にこれを繰り返すことで私たちは普段スムーズに歩くことができます。が、問題は日常の癖などでそれが過剰になってしまうことです」
下の図を見てみよう。地面に立ったときの足を後ろから見たものだが、過剰な回内、回外の足はそれぞれの踵が内側、外側に傾いていることがわかる。
「過剰の回内足になると足裏のアーチと呼ばれる“土踏まず”部分が失われ、扁平足になる場合がほとんどです」
アーチは地面に足が着く際のクッションの役割りを果たしている。
「アーチがなくなると、正しい姿勢も、軽やかな歩きも共に失われます。女性はこの回内足になることが多く、また加齢による足の筋肉の衰えでもアーチは下がりますので、40〜50代の人は特に気をつけたほうがいいでしょう」
〈 足を後ろ側から見ると… 〉
過剰な回内足をそのまま放っておくと、こんなデメリットも。
姿勢や歩き方だけではない、過剰な回内足はほかにも悪影響を与えるから注意が必要だ。まずは外反母趾。
「アーチのないベタ足は蹴り出すときに常に親指の外側が当たるので、そこの部分が外反母趾になりやすい」
さらには、大学の運動部でアスリートなどの面倒を見る機会の多い宮澤さんはこんなケースに出合うことも。
「足裏のアーチは複数の足の筋肉で支えられていますが、扁平気味の人はその一つの後脛骨筋(こうけいこつきん)(ふくらはぎの内部にある筋肉)に常に過剰なストレスがかかるので、肉離れやひどい場合は断裂を起こしたりすることもあります」
セルフチェック
アーチの具合を知る3つのヒント。
自分の足の骨格は正しい位置にあるか? いくつかのセルフチェックで見ていこう。まずはくるぶし立ちだ。
「足の内くるぶしと膝をつけたまま、つま先立ちができるかどうか。足裏のアーチには細かく言うと、内側と外側、横の3つがあって、これを3点アーチと呼びます。3点アーチがうまく機能しないと、これができません」
アーチの高さの具合は濡らした足裏で珪藻土のバスマットを踏んでもわかりやすい(下参照)。また、
「回内足の人は、下の靴診断のようにひも靴のベロが外側にずれたり、あるいは靴の内側の壁がつぶれたりしているので、一度注意してみてください」
□ 靴診断
□ くるぶし立ちテスト
□ ウエットテスト
『クロワッサン』1110号より