管理栄養士に聞く、「完全栄養食」玄米の実力と炊き方、保存法。
選び方、栄養素、保存法やおいしい炊き方を紹介します。
撮影・小川朋央 文・嶌 陽子
「玄米は豊富な栄養をとれるのが魅力。忙しい時は玄米と味噌汁だけでもいいくらいです」と話す管理栄養士の大島菊枝さん。
玄米とは米の籾殻だけを取り除いた精白されていないお米のこと。食物繊維が白米の約6倍含まれているほか、ミネラルやビタミンも豊富なのが特徴だ。ほかにも血糖値の上昇を抑えたり、免疫力を高めたりといった効果もあるといわれている。
以前は「玄米は炊きにくく、食べづらい」というイメージもあったが、最近は新しい製品も開発され、おいしく炊きやすい調理器具が多く出回っているそう。
「まずは手軽な玄米麺や玄米餅などから試してみるのも手。ぜひ楽しみながら好みに合うものを見つけてください」
Q.いろんな種類の玄米が あるけれど、どんな 玄米を選べばいいの?
A.栄養価や食感などに違いが。好みや家族構成に応じて選んで。
発芽玄米、ロウカット玄米、低アミロース米、分づき米など。玄米は構造の違いによっていくつかの種類に分けられる。
発芽玄米は玄米をわずかに発芽させたもの。ストレス軽減などの効果があるGABAが通常の玄米よりも多く含まれる。
ロウカット玄米は玄米の表面についているロウ層をとりのぞくことで浸水時間を短く、食べやすくしたもの。栄養価は玄米よりわずかに劣るものの、大差はない。
低アミロース米はアミロースの含有量が低く、冷めてももちもちの食感なのが特徴だ。分づき米は玄米から糠や胚を一定量除去したもの。栄養価はやや劣るものの、玄米初心者や子どもに向いている。
「また白米と同じく、玄米も銘柄によって風味が違います。少量から試して、好みのものを見つけていくといいでしょう」
Q.玄米はなぜ体にいいのでしょうか?
A.豊富な食物繊維が腸を元気に。不足しがちな栄養素も補えます。
「まずは何といっても食物繊維が豊富。玄米に多く含まれる不溶性食物繊維には、腸のぜん動運動を活発にし、便通をよくする働きがあります」
そのほかにも糖質の代謝を促し、疲労回復の働きがあるとされるビタミンB1などのビタミンや、健康維持に欠かせないミネラルも多く含まれている。
「カロリーは白米と大差ありませんが、食物繊維が豊富な分、糖分の消化吸収がゆるやかなので血糖値の上昇を防ぎ、太りにくくなる効果も期待できます」
さらに近年では、糠に含まれる「リポポリサッカライド」という成分に免疫力を高める働きがあるという説も。ますますその健康効果が注目されている。
●「完全栄養食」と呼ばれるほどの実力。
Q.玄米の保存方法や保存期間、賞味期限は?
A.できれば野菜室で保存して、1カ月以内で食べ切るのが理想。
白米と同じく、玄米も常温で長期間保存すると少しずつ酸化して風味が落ちていく。
「表面に糠がある分、白米よりは酸化しにくいかもしれませんが、それでも全くしないわけではありません。ジッパー付きの保存袋などに入れて、空気をしっかり抜いてから野菜室で保管するといいでしょう」
明確な賞味期限があるわけではないが、おいしく食べたいなら買ってから1カ月以内を目安に食べ切るようにしたい。
「一度にたくさんの量を買ってしまうと、冷蔵庫に保存するのも場所をとってしまいます。少量ずつ買って、その都度早めに食べ切るほうが、鮮度や風味を保てるのでおすすめです」
Q.体が疲れている時や、高齢者は玄米を食べないほうがいいって本当?
A.消化しにくいため、おかゆや1日1食にするなどの工夫を。
玄米は食物繊維が豊富な分、消化するには白米より時間やエネルギーを必要とする。
「胃腸が弱っている人や消化力が低下している高齢者が玄米を食べると、特に最初のうちは胃腸に負担がかかることも。玄米を食べ慣れていない場合は、いきなり1日3食玄米を食べるのではなく、1日1食にする、おかゆにする、白米2:玄米1の割合で混ぜて炊くといった工夫をしつつ、少しずつ慣れていくといいでしょう」
また、消化をよくするにはよく噛んで食べること、しっかりと浸水時間をとって柔らかく炊き上げることなども大切だ。
Q.玄米のおいしい炊き方と、炊いた後の保存法は?
A.しっかり浸水した後、塩ひとつまみを入れ、圧力鍋や炊飯器で炊く。
玄米をおいしく炊くために最も気をつけたいことは浸水時間。
「浸水時間が短いとパサパサした炊き上がりになってしまいます。最低でも2時間、基本的には一晩は浸水させましょう」
水加減はメーカーや銘柄にもよるが1合に対して1.5倍、300ml前後。炊く前に2合に対してひとつまみほどの塩を加えると、臭みが取れて風味が増す。
「玄米をもちもちに炊きたいのなら、圧力鍋が向いています。ない場合は、多少でも圧をかけられる鋳物鍋がいいと思います」
炊き上がったら充分に蒸らして、余った分は熱いうちに小分けにしてラップで包み冷凍庫へ。
『クロワッサン』1098号より
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