医師に聞く、女性ホルモンの基本と更年期の不調ケア。
イラストレーション・イオクサツキ 文・板倉みきこ
こんなことありませんか?
□ 顔がほてり汗が噴き出る
□ めまいや耳鳴りがある
□ 原因不明の頭痛がする
□ イライラして憂うつだ
□ わけもなく疲れやすい
□ 物忘れが多くなった
Q.更年期って大変そう。 どんな状態のこと?
A. 閉経の前後5年の時期を更年期と呼びます。
「更年期を病気と同じように捉えている人は多いですが、更年期は閉経の前後5年に及ぶ単なる期間。更年期そのものが問題なのではなく、その時期に起こる、日常生活に支障をきたすほどの症状が問題になるだけです。その場合でも、症状の軽減方法はいろいろあります」(婦人科医・吉形玲美さん)
不安になるのは、更年期に起こる心と体の変化に対して知識がないから。改めて正しい知識を身につけたい。
「閉経前後の女性の体に大きな影響を及ぼす主役は、女性ホルモン・エストロゲンです。年々、卵子は減り、卵巣が収縮し、卵巣を生産拠点とするエストロゲンの分泌量は低下していきます。エストロゲンは閉経を迎えるギリギリまで分泌されますが、その分泌量の減少とゆらぎが、心身にさまざまな影響を及ぼすのです。40代以降はもう一つの女性ホルモン・プロゲステロンの分泌量も低下し、“妊娠力”も低下します」
更年期を楽に過ごすためにケアは必須だが、同時に骨のケアも行いたい。
「女性ホルモンの分泌量が減少し始めると、骨は否応なく強度が下がります。骨の健康を維持することは、女性のQOLを高めるために必須だからです」
Q.女性ホルモン不足で不調が起こるのですか?
A. ホルモン分泌のゆらぎで自律神経のバランスが乱れ、更年期症状が起こります。
40歳を過ぎた頃からエストロゲンの分泌量は増減を繰り返す。
「分泌量の乱高下がもたらすゆらぎが、不調の原因です。もともとエストロゲンには、女性の体の潤いやしなやかさを保つ役割があります。そのため、分泌量がゆらぐ更年期に“乾き”や“きしみ”を感じやすくなるのです」
同時に、自律神経の不調も招く。
「下降したエストロゲンの分泌量を増やそうと、脳は必死に指令を出しますが、卵巣は指示どおりに働いてくれません。結果、脳の視床下部が乱れ、自律神経のバランスも崩れます。多汗や頭痛、不安感など、心身両面へ影響し、これらの不調全般を更年期症状と呼びます」。
閉経後5〜10年経つと、多くがこの症状から解放される。
Q.症状の程度に差があったり、体に出る人、メンタルに出る人がいるのはなぜ?
A. 感受性の強さには個人差があります。体のあと、メンタルにくるのが一般的。
女性ホルモンがゆらぎ、自律神経が乱れやすくなっても、実際に不調を感じる度合いは人によってまちまち。
「ゆらぎが激しい人、ゆらぎの期間が長い人ほど不調を感じやすい傾向があります。また、もともと体温調節が苦手な人など体質にもよりますし、真面目で几帳面な人、神経質な人ほど強く感じやすいともいわれています」
出産経験や子宮の有無は更年期症状に関係せず、遺伝的要素もないとされる。それでは、症状が体に出る人、メンタルに出る人の差は何だろうか。
「症状の多くは、月経不順が始まる頃からまず“体の不調”として出始め、その不調を我慢したり放置していると、心の不調が強く出てきます。体の不調サインを見逃さないことが肝心です」
Q.受診の目安は?
A. 日常生活に支障をきたす、と思えるレベルなら受診しましょう。
症状も多様なので、今の不調が更年期症状だとは自己判断しづらいもの。
「そもそも、客観的な尺度がないのが更年期症状の特徴です。程度もバラバラですが、本人がどう感じているかが基準なので、日常生活に支障をきたすレベルなら受診をお勧めします」
婦人科医は、女性の不調ケアの身近な相談者と思ってほしい、と吉形さん。
「診察や検査を受けることで具体的な対策が見つかり、症状が改善したり、必要以上に思い悩むことがなくなるなど、心身両面にメリットがあります。日頃から『こんな時に、こんな不調が出やすい』といった具体的なシチュエーションやエピソードをメモしておくと、受診時に自分の症状を伝えやすく、医師も診断しやすくなるでしょう」
『クロワッサン』1104号より
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