からだ

医師に聞く「デブ菌、ヤセ菌って本当にいるのですか?」

  • 文・韮澤恵理 イラストレーション・ノグチユミコ

善玉菌を元気にしてヤセ菌を味方につける。

健康の鍵を握るのは健やかな腸と言われています。どんな腸が理想なのか、便秘外来のドクターで多くの人の腸を改善してきた小林暁子さんに聞いてみました。

「腸の健康を握るのは、腸内細菌のバランスです。腸を元気に保つ善玉菌、有害物質を作ったり、お通じを乱す悪玉菌、どっちつかずの日和見菌がいるのですが、この比率を正常にするのが大切です」

日和見菌という呼び名、よく耳にしますがどんな菌なのですか?

「優勢な菌の手助けをすることからこんな呼ばれ方をしていますが、実はいろいろな種類がいます。最近話題のヤセ菌、デブ菌も日和見菌の一種なんですよ。太った人の腸内細菌とやせた人の腸内細菌をそれぞれマウスに移植した実験データがあります。太った人の菌を移植したマウスだけが太りました」

やはりヤセ菌、デブ菌はいるのですね。ヤセ菌を増やし、デブ菌を抑え込むにはどうしたらいいのでしょう?

「日本人はもともと炭水化物や海藻をしっかり食べて健康を維持してきた民族なのに、急激な食の欧米化や糖質オフダイエットの流行で、食物繊維、糖、発酵食がどれも足りなくなっています。これが『悪い腸』の原因です」

日々患者さんの暮らしを聞く小林さん。食生活こそ健康な腸への近道だと実感しているそう。

「よかれと思ってやっている健康法が、落とし穴になることがあります。鵜呑みにせずにバランスのいい食事をするのが一番です」

発酵食と穀類、野菜、大豆、海藻という昔ながらの食事で、不足している食物繊維やオリゴ糖が補え、腸活になるのですね。

いろいろな食品から多様な栄養素を摂ることもポイントのひとつと聞きました。

「食物繊維を活用するためには水分をたっぷりと。油を適量摂ることはスムーズな排便を助けてくれます。多様な食材を偏らずに摂るのが『健美腸』への道です」

初歩的なのに、ないがしろにしがちなことばかり。食生活を見直してみたい。

日和見菌が「ヤセ菌」「デブ菌」の正体!

【善玉菌】

ビフィズス菌 乳酸菌 酪酸菌など
 ↓
腸内を弱酸性に保って悪玉菌を増えにくくし、ビタミンを作ったり、免疫力を上げる働きをする。

【日和見菌】

バクテロイデス→ ヤセ菌
フィルミクテス→ デブ菌
大腸菌(無毒株)
レンサ球菌など
 ↓
腸内細菌の多数派。善玉菌と悪玉菌、優勢なほうと同じ働きをする菌類。ヤセ菌、デブ菌はこの仲間。

【悪玉菌】

ブドウ球菌
ウェルシュ菌
大腸菌(有毒株)
 ↓
腐敗を進めたり、発がん物質などの有害成分を作る。お通じを乱れさせ、腸壁を荒らして免疫力も下げる。

小林暁子

小林暁子 さん (こばやし・あきこ)

小林メディカルクリニック東京 院長

順天堂大学医学部総合診療科を経て、現クリニックを開業。腸のスペシャリストとしての便秘外来に加え、肌トラブル、女性特有の不調などトータルな診療を行う。著書に実践しやすい生活習慣『免疫力を上げる健美腸ルール』など多数。※プロフィールは雑誌掲載時の情報です

『Dr.クロワッサン 強い腸をつくる、発酵食の摂り方大百科。』(2021年2月18日発行)より。

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