からだ

動きをほんの少し変えるだけ、日常動作から疲れをとるメソッド。

人の動きにはクセがある。そして、そのクセが抜けたい疲れの原因となっていたら。日常の動作を振り返って、今一度自分の動き方を点検してみよう。
  • 撮影・青木和義 スタイリング・高島聖子 ヘア&メイク・大谷亮二 モデル・水瀬彩乃 イラストレーション・オガワナホ 構成&文・堀越和幸

立ち上がる時につい口をつく、どっこいしょ。普段の何でもない動作で私たちはすでに疲れている。どうしてか? アレクサンダー・テクニークの専門教師、木野村朱美さんはこう解説する。

「すべては体に対する誤った思い込みが原因で、それが直せないからです」

たとえば、背骨と聞いて思い浮かべるのは、体のどこの部分だろうか?

「多くの人は背中のゴツゴツとしたイメージに引っ張られて、背中側にあると思い込んでいますが、あれは背骨の突起部分でしかない。本当は思っている以上に体の中心部にあります」

なるほど背骨は姿勢を支えてくれるが、それが背中側にあるか、体の中心にあるかを意識するだけで、背筋が自然と伸びないだろうか?

「背中側で体を支えようとすると常に背中を緊張させることになります。すると筋肉が固くなり、血流も悪くなる」

そして、そういう人がよくやってしまいがちなのが、お尻の肉を座布団がわりにしてしまう座り方。

「疲れない座り方は座骨で座るのが基本ですが、座骨はお尻ではなく股の間にあります。座骨、背骨、そして首の骨、頭、と体を支える中心線は常に体の真ん中です。私はこれを“4つの積み木”と呼んでいます」

積み木は上手に乗せれば高く積んでも倒れない。人間の体もそれと同じ。

「年を重ねていくと筋力は落ちていきますが、体のクセだけはしぶとく残る。要はそのクセにいつ気づけるかです。遅すぎるということはありません」

靴下を履く、窓を拭く……、日常動作をテストがわりに、試してみよう。

日常生活をラクにする「4つの積み木」

上半身の土台となる座骨はお尻ではなく、股の間にある。座骨を意識して座るだけで、お尻の肉を座布団に敷いた骨盤が自然と起き上がる。

背中のゴツゴツは骨の突起部分。背骨本体は体のほぼ中心を通っている。座骨を土台にして、体の中心で上半身を支える意識が大切。

首の骨は、食道のゴクンと飲み込むところのすぐ後ろにある。思っているよりかなり前にあるのを意識。

座骨、背骨、首の骨と積んだら、最後に頭をふんわり乗せる。"私は積み木"のイメージで。

【覚えるとすぐに役立つ体の動かし方】

1.頭ふんわりで立つ

4つの積み木を頭で理解したら、実際に立ってみよう。座骨が土台、体の中心に背骨のラインをつくり、その上に頭をふんわり乗せる。これが疲れない立ち方。あらゆる動作の基本となるので、姿見などで折に触れて点検を。

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力を抜いて立ったら、前後にユラユラさせてバランスを探ってみよう。

まっすぐ立っているつもりでもお腹が出て、反り腰に。

2.ビッグマウスを曲げ、椅子から立つ

立ち上がるだけで人はなぜ疲れる? それは腰や首に無理をさせているから。頭を座骨に乗せる座ったままでの基本姿勢から唇のような形の〝ビッグマウス〞と呼ばれるお尻の筋肉ラインで曲げ、前方向に立ち上がってみよう。

上体をお尻から曲げ、上方向ではなく前方に重心移動。背筋はまっすぐ。

ビッグマウスラインがあるのは、腕を伸ばした手首を曲げたあたり。

上方向に立つと腰や太ももに無駄な力がかかる。

3.腕は鎖骨から伸ばす

思い込みに気づくとすぐに日常生活に役立つ体の動かし方をもう一つ。腕の付け根は肩ではなく、鎖骨の付け根と考えよう。これを意識するだけで、腕を上げる高さが変わるのは、上写真を見ても一目瞭然。家事に役立てて。

鎖骨の付け根を意識すると、肩の余計な力も抜ける。

肩から上げると頑張ってもこの程度。

木野村朱美

木野村朱美 さん (きのむら・あけみ)

アレクサンダー・テクニーク専門教師

人間本来の能力を引き出す「アレクサンダー・テクニーク」を20年にわたって指導。近著に『イラストでわかる疲れないカラダの使い方図鑑』。

『クロワッサン』1073号より

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※ 記事中の商品価格は、特に表記がない場合は税込価格です。ただしクロワッサン1043号以前から転載した記事に関しては、本体のみ(税抜き)の価格となります。

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