立ち上がる時につい口をつく、どっこいしょ。普段の何でもない動作で私たちはすでに疲れている。どうしてか? アレクサンダー・テクニークの専門教師、木野村朱美さんはこう解説する。
「すべては体に対する誤った思い込みが原因で、それが直せないからです」
たとえば、背骨と聞いて思い浮かべるのは、体のどこの部分だろうか?
「多くの人は背中のゴツゴツとしたイメージに引っ張られて、背中側にあると思い込んでいますが、あれは背骨の突起部分でしかない。本当は思っている以上に体の中心部にあります」
なるほど背骨は姿勢を支えてくれるが、それが背中側にあるか、体の中心にあるかを意識するだけで、背筋が自然と伸びないだろうか?
「背中側で体を支えようとすると常に背中を緊張させることになります。すると筋肉が固くなり、血流も悪くなる」
そして、そういう人がよくやってしまいがちなのが、お尻の肉を座布団がわりにしてしまう座り方。
「疲れない座り方は座骨で座るのが基本ですが、座骨はお尻ではなく股の間にあります。座骨、背骨、そして首の骨、頭、と体を支える中心線は常に体の真ん中です。私はこれを“4つの積み木”と呼んでいます」
積み木は上手に乗せれば高く積んでも倒れない。人間の体もそれと同じ。
「年を重ねていくと筋力は落ちていきますが、体のクセだけはしぶとく残る。要はそのクセにいつ気づけるかです。遅すぎるということはありません」
靴下を履く、窓を拭く……、日常動作をテストがわりに、試してみよう。