からだ

冷え性研究の第一人者に聞く、タイプ別冷え・むくみの徹底ケア。

  • イラストレーション・中島陽子 構成&文・オカモトノブコ

(中高年女性に多い隠れ冷えタイプ。)内臓型

□ 表面は温かく汗をかきやすい
□ 小太りでよく食べる人が多い
□ お腹まわりが冷えてガスがたまりやすい
□ 太ももや二の腕などが部分的に冷えることも

手足は温かいのに、熱を逃がしすぎて体の中心が冷える内臓型。

「もともと副交感神経が優位な人に多く、食欲旺盛でありながら、だるさや体調不良を感じやすいタイプです。一方で交感神経の働きは弱いため、寒くても末梢の血管が収縮せずに熱をどんどん放出。その結果、腸や膀胱、子宮など内臓の血流が低下し、冷えのほか、さまざまな不調を招くのです」

対策としては体の中心部を温めるほか、弱った交感神経を刺激し、鍛え直すことが必要だという。

「運動で体を動かし始めると、自動的に交感神経のスイッチが入って血流を調節します。おすすめの時間帯は、体温がピークになる夕方4~6時の間。自律神経と体温のメリハリを整えて〝反応のいい体〟を目指したいですね」

内臓型の冷えはこれで改善!

骨盤の中央・仙骨で、神経が出入りする左右各4つの穴にあるツボの総称。骨盤周辺の血流を促し、婦人科系の治療に多く用いられる。
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骨盤の中央をソフトボールでツボ押し

ソフトボールを八髎穴のツボ周辺に当てて体重をかけ、位置をずらしながら各10〜30秒キープ。「痛い部分は、循環が悪化しているサイン。ツボを刺激することで改善できます」

中条流子孕(ちゅうじょうりゅうこばら)みの灸点を温める

古来より〝妊活のツボ〞として知られ、おへそを頂点として、自分の唇の幅を一辺とした正三角形の左右の角にある。「ここにお灸をするとツボの真下にある腹腔内の交感神経がゆるみ、子宮や卵巣、直腸など内臓の血流を増やします」
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シルクの腹巻きでお腹をサポート

ツボ周辺を温めるなら、腹巻きを使う手も。「汗をかきやすい内臓型には、お腹をしっかり温めながら汗を発散する、シルク素材が最適です」

ぶらんぶらんと歩いて血液の巡りを改善

おすすめの運動は、ひじを伸ばして早歩きする「ぶらんぶらんウォーキング」。腰から踏み出し、ふくらはぎをしっかり使うと血流がより促される。「無理は禁物。10~15分でも効果は充分です」

はおりものや インナーは登山のウエアなどを活用

「冷房対策の上着にも、汗かきの内臓型はひと工夫を」。伊藤さんが提案するのは、保温と吸湿・放湿性にすぐれた登山用などの機能性ウエア。暑い外から室内に入ったときの、急な汗冷えを回避できる。

漢方薬「温経湯(うんけいとう)」も効く

「内臓型の冷えは、軽症であれば漢方薬だけで改善することも。なかでも〝温経湯〞は冷え症で、手足や顔がほてる女性に多く用いられるもの。体表面の血流を冷えた体の中心部に運搬する作用を持ちます」

(手の指先と足先が常に冷える。)四肢末端型

□ 手足の末端が氷のように冷える
□ 食事量が少なくやせ型の人に多い
□ ダイエット志向の若い女性に多い
□ 冷えによる頭痛を誘発することも

手足の末端が氷のように冷えたまま、なかなか温まらないタイプ。

「大きな原因は、食事や筋肉量が少ないために熱が不足すること。体温を守る防御反応で交感神経が過剰に働き、末梢の血管を収縮させてしまうため、カイロや靴下の重ねばきでは解決されません」

たんぱく質豊富な食事で熱を生み、逃がさない工夫を心がけて。

四肢末端型の冷えはこれで改善!

足指の付け根の間、関節のすぐ手前にあるくぼみのツボ。手の指で足指の間をぐぐーっと滑らせ、ツボの周辺をマッサージしてもいい。
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お風呂で足先ストレッチ

ツボがある足の甲の先を包むように持ち、手前に引っ張って5秒。「パッと離すと血管を広げる物質が放出され、指先の交感神経がゆるんで血流が増加します」。これを左右5回繰り返そう。

白米〝もどき〞豆腐を炭水化物に置き換え

「体内の熱が不足するこのタイプは、運動なしでも熱源になるたんぱく質をたっぷり補うことが必要。崩した豆腐をご飯がわりにするのもいいですね」

首が詰まった服で体幹部を温める

四肢末端型の冷え対策には、首元や肩などの体幹部を冷やさない服選びもポイントに。「体の中心を温めることで末端の血管が開き、血流が増加します」

(代謝機能が衰えて熱が極端に少ない。)全身型

□ 表面も内側も冷えている
□ 寒気を感じやすい
□ 体温が均等に下がり自覚がないケースも
□ 不摂生な生活やストレスも要因に

「基礎代謝が低く、エネルギーの消費を節約するために体温が下がります。原因として多いのは、ストレスや不摂生な生活。さらに熱生産に関わる甲状腺機能の低下、解熱作用がある痛み止めや風邪薬の常用が引き金になることも」

まずは基本的な生活習慣や病気の有無をチェックして、弱った自律神経と代謝の働きを立て直そう。

全身型の冷えはこれで改善!

足指を握り、土踏まずのやや上でくぼんだ部分。足裏を3等分して指側約3分の1のところにあるツボ。血流を改善し、代謝アップに効果あり。

すき間時間に青竹踏みも

湧泉のツボがある足裏を刺激して、全身の血流をスムーズに。「青竹踏みのほか、硬いゴルフボールなどを足裏でコロコロ転がす方法も」

体操やストレッチ& 寝たまま自転車こぎ

「全身型には、体を伸ばしてゆるめる体操やストレッチがおすすめ。また、仰向けで自転車こぎのように20~30回、脚を大きく回すのも効果的です。脚をしっかり伸ばし、腹筋で体を支えるのがポイント」

漢方薬もおすすめ

「代謝を上げて心臓の機能を高める附子(ぶし)、体を温める乾姜(かんきょう)などが入った漢方薬も有効です。ただし使用の際は、漢方の専門医に相談を」

伊藤 剛

伊藤 剛 さん (いとう・ごう)

北里大学東洋医学総合研究所 (北里大学客員教授)

日本初の冷え症外来で、漢方や鍼灸などの東洋医学と、現代医学の両面から多種多様な不調の診療に当たる。冷え症研究の第一人者。

『クロワッサン』1073号より

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