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コロナ禍でのHRT(ホルモン補充療法)、再開してもいいですか。【89歳の現役婦人科医師 Dr.野末の女性ホルモン講座】 

産婦人科医師の野末悦子さんに教わります。
  • 撮影・岩本慶三 イラストレーション・小迎裕美子 構成・越川典子

Q. コロナ禍でのHRT(ホルモン補充療法)、再開してもいいですか。

新型コロナのワクチン、秋には2回目の接種も終え、罹患者数が減ってきていることもあって、少し安心しているところです。2年前、更年期障害の治療でHRTを始めたのですが、コロナに罹患した場合の血栓リスクもあるからと、医師のすすめでHRTを中止しています。ただ、その後の症状がつらいので、再開したいのです。ちなみに、BMIは28の、やや肥満体形です。コレステロール値、血圧ともに高めです。(M・Fさん 52歳・会社員)

A. 女性医療は、ご自身で 決めること。先を見据えて 賢い選択をおすすめします。

治療を急にやめてしまって、M・Fさん、おつらかったのではないでしょうか。HRTを中止すると、更年期症状が再発することがわかっています。やめるにしても、少しずつ減らしたほうが、カラダへの影響が少なくてすみます。

さて、HRTと新型コロナウイルスとの関係は、まだまだわかっていません。血栓リスクがあるという理由から控えるという考え方はたしかにあって、2020年8月に日本産科婦人科学会などが医療者に注意喚起をしました。その内容は――、

●COVID-19重症、または軽症でも呼吸症状を伴う場合は、OC(低用量ピル)・LEP(月経困難症治療薬)やHRTを中止し、低分子ヘパリンを投与する。

●COVID-19軽症、または無症状の場合は、OC・LEP使用者では、エストロゲン製剤以外の方法についても検討する。HRT使用者では、エストロゲン製剤を中止するか、または経皮製剤を用いる。

このように、安全のために罹患者はHRTをいったん中止したほうがよいとされていますが、逆にエストロゲンがよい効果があるのではないかという指摘も海外ではあるようで、検証はまだまだこれから先の話になるのだと思います。

新型コロナウイルス 性別・年代別陽性者数(累積)

陽性者の累積を見ると、ボリュームゾーンは20代。更年期世代でも、基礎疾患をもつかどうかでリスクは変わってくる。出典:厚生労働省「データからわかる-新型コロナウイルス感染症情報-」(2021年11月02日版)

HRTを中止するデメリットはあるけれど安全を優先するか、リスクがあってもHRTのメリットをとるか。いまの体調をみながら、比較検討する必要があります。M・Fさんは中止したことに加え、コロナ禍のストレスでより症状が重くなっている可能性も。かかりつけの医師とご相談の上、再開のタイミングを決めるようにしましょう。

※症状や治療法には個人差があります。必ず専門医にご相談ください。

デメリットとメリットを比較。自分で選択する。(Dr.野末)

野末悦子

野末悦子 さん (のずえ・えつこ)

産婦人科医師

横浜市立大学医学部卒業。川崎協同病院副院長、コスモス女性クリニック院長、久地診療所初代所長、介護老人保健施設「樹の丘」施設長などを歴任。

『クロワッサン』1054号より

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