歩いていても食べていても瞑想はできます。
これまで自分がいかに上の空で過ごしていたか気づきより丁寧に暮らせるようになります。精神科医で脳科学者の久賀谷亮さんに取材しました。
撮影・岩本慶三 モデル・くらさわかずえ スタイリング・高島聖子 ヘアメイク・村田真弓 文・吉田真緒
【こんな人に】
▢ 家事や仕事の効率を上げたい。
▢ 忙しくて瞑想する時間がない。
▢ 集中力をつけたい。
▢ ポジティブでいたい。
【効果を上げるには】
▢ 決まった行動で行う。
▢ 瞑想のコツをつかんでからトライ。
こんなときに瞑想
●食事
食べる前に、初めて見る料理のように、香りを確かめたり、形をよく観察しましょう。
口に入れてからも食レポをするように、味を言葉にしてよく味わいます。
食感やのどごし、胃にたまっていく感覚などを感じながらていねいに食べることで、いつもより新鮮な食事になるはず。
●家事
掃除や洗濯、料理などの家事は自動操縦になりがちです。
手を動かしながらも頭では違うことを考えていると、それだけ脳のエネルギーを消費してしまいます。
洗濯ひとつとっても、瞑想の気持ちで行えば、服の手触りやしわの寄り方、洗剤の匂いなどから“今ここ”に集中できます。
●着替え
着替えたり顔を洗ったり、歯を磨いたりといったルーティンは、普段は目をつむっていてもできそうなくらい無意識にやっているのでは。
そういう日常習慣こそムービング瞑想にもってこい。忙しくて瞑想ができない人でも、ムービング瞑想で何も考えない時間をつくりましょう。
●入浴
湯船に浸かりながら瞑想をすれば、お湯の感触や温度、湯の動き、水圧、浴室の湿度など、さまざまなことを感じられるでしょう。
もともと入浴はリラックスできるものですが、瞑想をすればより脳を休ませることができます。
初めて体験する子どものように興味や関心を持って行う。
マインドフルネスの上達には3段階あります。
初期は“今ここ”に注意を向けることに悪戦苦闘します。
次第に、ときどき心がさまようけれど、軌道修正を繰り返すように。
最終段階では意識しなくても心を“今ここ”に留められるようになります。
そうなれば、生活のなかでも瞑想ができるようになります。
私たちは普段、たくさんの行動をほとんど自動的にこなしています。
たとえば歩行。歩くこと自体に注意を向ける人はまずいません。
しかし、マインドフルネスでは、歩くことも瞑想にできます。歩行瞑想はムービング瞑想の一つで、Googleの社員研修プログラムにも取り入れていることで知られています。マインドフルネスは仕事の効率アップにつながるからです。
食事や家事、入浴といった普段何気なくやっていることでも瞑想ができます。
子どもが初めてやるように、目の前のことに好奇心を持ち、100%の意識を向けて取り組みましょう。
「玄関を出た瞬間からスタート」などタイミングを決めて習慣化してもいいでしょう。
マインドフルネスを味方につけると、日常に新しい発見があり、集中力も鍛えられます。心がさまよわなくなるので、脳のエネルギーを消耗せず、結果的に疲れにくくなります。
毎日いきいき暮らす習慣です。
歩行瞑想
歩行瞑想はムービング瞑想の定番。当たり前のように思える動作の一つひとつを意識して。買い物に出かけるときや通勤など、普段の生活のなかで実践してみましょう。
1. “今ここ”を 意識して歩く。
慣れないうちはゆっくり歩くとやりやすい。
手足の動きや体重の移動、地面の固さなど、感覚を細かく意識する。シンプルな歩行が、実は筋肉や関節の複雑な連動によって成り立っていることに気づいていく。
もし雑念が生まれても、気づいたときに“今ここ”に戻り淡々と歩く。
2.ラベリングしながら歩く。
動きに番号をふる。呼吸を数える以外にも、腕のふりに合わせて「右・左・右・左」、足の動きに合わせて「上げる・下げる・上げる・下げる」などと名前をつけてもいい。
リラックスしていて覚醒している、瞑想特有の状態を体験する。
『Dr.クロワッサン 免疫力を強くする、疲れない体のつくり方。』(2020年6月26日発行)より。