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不安を外に出すと脳のメモ帳は空く?まだまだ知りたいワーキングメモリ。

〝物忘れ〟と深く関わっている脳のワーキングメモリという働き。それは、私たち人間ならではの特別な力だった!脳科学者の篠原菊紀さんに聞きました。
  • 撮影・青木和義 イラストレーション・黒猫まな子 文・嶌 陽子

書き出す、人に話す。不安を外に出すと脳のメモ帳は空く。

不安やストレスでいっぱいで、頭がうまく働かない……。そんな時はどうすればいいのだろうか。

「最も有効なのは、不安に感じていることを書き出したり、友人や専門家に話したりすること。不安やストレスを脳の外に出すことによって、脳のメモ帳に空きができるのです」

シカゴ大学の心理学者・ベイロック氏が行ったある研究がある。テスト前の学生に「成績が悪ければ連帯責任」「成績優秀なら賞金を出す」など、良くも悪くもプレッシャーをかけた。そして学生を半分に分け、片方のグループにだけ、テスト前にテストに関する不安を書くよう指示。その結果、不安を書き出したグループのほうが、成績が良かったのだ。

「テストに限らず、仕事でのプレゼン、面接など、不安がある場合は事前にそれを書き出すとパフォーマンスが上がると言われています」

TO DOリストを作ることにも同様の効果が。頭の中でやるべきことがぐるぐる回っていると、それだけでワーキングメモリを使ってしまう。書き出して外に出すことで、脳のメモの空き容量を大きくするのだ。

ストレスや不安を日記などに書いてみたり、信頼できる人に話してみると、頭の中がすっきりするかもしれない。

【WHOによる認知症と認知機能低下の予防のためのガイドライン】

・運動の習慣化
・禁煙
・アルコール摂取の抑制
・健康的な食事
・血圧・コレステロール・血糖値のコントロール

+認知的なトレーニング

ワーキングメモリを鍛えることは認知症予防にも効果大。

2019年、WHOは「認知症と認知機能低下の予防のためのガイドライン」を発表した。それが上にある表だ。つまり、認知症の予防対策と認知機能低下の予防対策は同じ内容。運動の習慣化や禁煙、健康的な食生活など、ワーキングメモリの低下を防ぐことは、そのまま認知症の予防につながるのだ。

「軽度の認知症の人が運動や食生活の改善をしたところ、認知機能が向上したという報告もあります。こうした生活習慣の改善に脳トレなどの認知トレーニングを組み合わせると、より効果的です」

なお、物忘れがひどくなった場合、単なる加齢によるワーキングメモリの低下なのか、認知症、あるいは何らかの病気なのか、判断に悩むこともあるかもしれない。

「見極めるのは難しいですが、判断の大きなポイントは、本人や家族の日常生活に著しい支障があるかどうか。その場合は一度物忘れ外来などで診察を受けるといいでしょう。認知症以外にも甲状腺機能低下症、正常圧水頭症など、いくつか考えられる疾患があり、治療により治る場合もあります」

適度な運動や健康な食生活などとともに、人との会話もワーキングメモリを大いに鍛え、認知症の予防につながる。
篠原菊紀

お話を伺ったのは

篠原菊紀 さん (しのはら・きくのり)

公立諏訪東京理科大学教授

脳科学者。幼児教育や中高年の脳トレ開発のほか、テレビやラジオでも活躍。著書に『脳科学が教えてくれた 覚えられる忘れない! 記憶術』(すばる舎)など多数。

『クロワッサン』1030号より

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