女性医療を試してみたい。読んで理解できるエビデンスはありますか。【87歳の現役婦人科医師 Dr.野末の女性ホルモン講座】
撮影・岩本慶三 イラストレーション・小迎裕美子 構成・越川典子
Q. 女性医療を試してみたい。読んで理解できる エビデンスはありますか。
50歳です。まだ閉経していませんが、量がかなり少なくなっています。とくに体調は悪くないのですが、この夏、髪の毛がびっしょりになるくらい汗をかくようになりました。こんなことは初めてです。ホルモン補充療法(HRT)を受けてみたいのですが、本当にこの症状がなくなるのか。HRTの効果はどの程度のものか、私が読んでもわかるエビデンス(証拠・根拠)があれば教えてください。(K・Yさん 50歳 公務員)
A. 受けた場合だけでなく、受けなかった場合どうなのかも知りましょう。
きちんとエビデンスを求めるK・Yさんの姿勢、いいですね。
今は自宅にいながら海外の論文でも検索できる時代、ご自分でもいろいろお調べになるといいと思います。ただ、ネットの情報は玉石混交。引用論文が明記されているかをチェックするようにしましょう。
その点、K・Yさんにお読みいただくのに、とてもいい資料があります。『HRT(ホルモン補充療法)を受ける? 受けない? 意思決定ガイド』です。読みすすめながら、知識を得られ、また考えがまとめられるように作られています。日本更年期と加齢のヘルスケア学会が認定した、エビデンスのしっかりしたガイドと言えます。
下の図表は、『意思決定ガイド』から引用させてもらいました。HRTを受けた場合と、受けなかった場合とを、絶対リスクで比較したものです。たとえば乳がんの比較では、今ある論文では、5年以内では発生率は変わらないことがわかります。また、HRTをしなくても1年後症状が軽くなる人も半数以上います。自分の場合どう考えるか。その判断材料のひとつにしてほしいと思います(HRTを受ける受けない、どちらにせよ、年に1回の乳がん検診は受けるようにしましょう)。
HRTのエビデンス比較
このガイドが有効だと私が考えるのは、ご自身の判断の一助になるとともに、医師とのコミュニケーションの手助けにもなる点です。医師の立場からしても、このようなガイドを読んできてくださると、相互理解が早くすすむのではと期待します。
※症状や治療法には個人差があります。必ず専門医にご相談ください。
今あるエビデンスをどう判断するか、よく考えましょう。(Dr.野末)
野末悦子(のずえ・えつこ)さん●産婦人科医師。横浜市立大学医学部卒業。川崎協同病院副院長、コスモス女性クリニック院長、久地診療所初代所長、介護老人保健施設「樹の丘」施設長などを歴任。
『クロワッサン』1027号より