からだ

気象病には対処法があります。

天候の変化で起こるさまざまな不調。気のせいと看過されがちだが、実は多くの人が悩む身近な症状。日本初の気象病外来・天気痛外来を開設したパイオニアで医師の佐藤純さんにメカニズムや対処法を学んで、つらさを軽減しよう。
  • イラストレーション・木下綾乃 文・石飛カノ

病院で診察を受けるのも手。

気象病をそうとは知らずに何十年も患っている人は少なくない。まわりから「怠けている」「気のせい」と言われ続け、誰にも理解を得られずに苦しんでいるケースがほとんどだという。

「なぜここまで引っ張ってきたの?という方がとても多い。天気が崩れる前に片頭痛の予兆として肩こりや腹痛、手足のしびれや息苦しさなど、全然関係ない症状が出てくることもあります。そういう人がいることを分かっていないと医療の対応を外すことがあります」

そこで病院の診察に効果を発揮するのが「痛み日記」。天気が悪いときに調子が悪くなっていることが分かれば、医師の対応も変わってくるはず。

日常生活で気を付けたほうがいいこと。

地球上の生物は一日24時間という時間を感知し、体のリズムを地球に合わせることで生き延びてきた。大潮のときに出産が多く、小潮のときに植物の成長が緩やかになるのは地球のリズムを拾っているから。

「自律神経のバランスが乱れてそのリズムが崩れると、私たちの体に異変が起こります。だから自律神経を乱れさせないよう心がけることが重要。飛行機や新幹線など、高速な乗り物で移動したり、高層ビルのエレベーターに乗ったときなどは気圧が急激に変化します。これらを利用するときには体調が変わるかもしれないことを自覚しておきましょう」

3つの基本方針で体を整える。

【自律神経を整える】
気象病に負けない体づくりのための方針は3つ。まずは、気圧の変化によって影響を受けやすい自律神経を整えること。食事を規則正しくとり、睡眠時間を確保して生活リズムを整える。なかでも睡眠は重要。ぬるめのお湯に浸かって心身をリラックスさせ、寝る前はスマホやパソコンを手にしない。寝る前のコーヒーやお茶、アルコールは避け、アロマや音楽などでリラクゼーションを促す。とくに家にこもりがちな生活になると日々のリズムは乱れがち。再構築を。

【漢方を利用する】
内耳の血行不良や自律神経の乱れに有効とされているのが漢方薬。東洋医学の基本の考え方は生命エネルギーの「気(き)」、カラダに栄養を運ぶ「血(けつ)」、血液以外のあらゆる水分である「水(すい)」のバランスを整えること。どれかひとつでも不足したり滞ると、不調や病気の原因に。気・血・水のバランスを整える漢方薬は、まさに自律神経の乱れを正常な状態に戻す手段。気象病の改善に効果が期待できる漢方薬は水分の巡りを促す五苓散、神経の興奮を抑える抑肝散など。

[気象病に用いられる漢方]

●半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)・五苓散(ごれいさん)・柴苓湯(さいれいとう)
体内の水分の巡りを促して、余分な水分を排泄。内耳のむくみの改善効果が。

●抑肝散(よくかんさん)
イライラや不安感で眠れないときに、気持ちを落ち着かせて熟睡をもたらす。

●当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)
体内の熱をつくり冷え性を改善。首や肩、腰などがこっている人におすすめ。

【薬の服用のタイミング】
気象病では頭痛に伴うめまいの症状が現れるケースが多い。内耳と脳をつなぐ前庭神経は平衡感覚を感知する神経。この部分の興奮を抑えたり、内耳の血行を改善するめまい薬を処方してもらうのも、ひとつの手。また、本当に頭痛がひどいときは鎮痛薬で対応を。対処しないと痛みが蓄積され、脳が痛みに対して敏感になってしまう。ただし多用すると逆に頭痛が悪化することも。気圧の変化による痛みのときは迷わず服用。そうでないときは、しばらく様子見を。

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