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しんどさを生む「気象病」とは?

天候の変化で起こるさまざまな不調。気のせいと看過されがちだが、実は多くの人が悩む身近な症状。
メカニズムや対処法を学んで、つらさを軽減しよう。

イラストレーション・木下綾乃 文・石飛カノ

しんどさを生む「気象病」とは?

雨が降ると膝が痛くなる。台風が近づいてくると頭痛がする。どうもしんどいと思ったら、翌日やはり雨だった。

天気の変化による不調に悩まされている人は少なくない。長らく「単なる気のせい」「偶然が重なっただけ」と思われてきたこうした症状、近年では「気象病」という名で呼ばれ、注目を集めている。

発端となったのは気象病研究の第一人者、佐藤純さん。天気によって生じる慢性の痛みを「天気痛」と名付け、日本初の気象病外来・天気痛外来を開設したパイオニアだ。

「1983年から痛みを研究し、動物実験や人の臨床実験でどうやら天気痛と呼ぶような症状があり、意外に多くの方がそれを感じていることが分かりました。2015年に出演したテレビ番組で初めてそのことに言及したところ、大変な反響を呼んだのです」

世に周知されたのは、わずか5年前の話。ひょっとして自分もそうかも、と思い当たる人、傾向を知り、対策を。

佐藤 純(さとう・じゅん)さん
医師。名古屋大学教授を経て、2007年に愛知医科大学病院・痛みセンターにて気象病外来・天気痛外来を開設。2018年より中部大学生命健康科学部教授に就任。『天気痛 つらい痛み・不安の原因と治療方法』(光文社新書)など天気痛に関する著書多数。

気象病のメカニズム

気圧の変化を耳が察知、交感神経が興奮すると……。

晴天に雨天、温度や湿度、気圧や風速など天候にはさまざまな条件がある。このうち、気象病のカギを握っているのは気圧だという。

「私は気象病は耳が敏感な人がなりやすいと考えています。耳の鼓膜の奥には内耳という器官と、内耳と脳を繋ぐ前庭神経があります。マウスの実験では気圧を下げると前庭神経が特異的に反応することが分かりました。人も同じように、内耳の前庭神経で気圧の変化を感じとっていると考えられます」

内耳で気圧の変化を感じると、その情報が脳に伝わり自律神経を活性化させる。自律神経には交感神経と副交感神経の2種類があり、このうちストレスに対応して優位になるのが交感神経。

「気圧の変化はいわばストレスです。これによって交感神経が興奮し、痛みの神経と繋がってしまうことで痛みが悪化する。それが古傷や慢性痛の原因です。一方、交感神経が興奮すると血管が収縮してまわりの神経を刺激します。肩こりや緊張性頭痛はこちらが原因と考えられます」

同じ頭痛でも片頭痛の場合は逆に血管が拡張することで起こる。こちらは自律神経ではなく、内耳の前庭神経が血管を広げる三叉(さんさ)神経に作用している可能性があるという。

また、自律神経のバランスが崩れて副交感神経が優位になると、だるさや眠気の症状が現れることも。すべては耳→脳→自律神経のリレーが原因。

内耳にあるセンサーが気圧の変化を感じとり、前庭神経を介して脳に情報を送る。すると自律神経のバランスが乱れ、主に交感神経が興奮。痛みの神経とくっつけば慢性痛、血管が収縮すれば頭痛・肩こりなどが起こる。
内耳にあるセンサーが気圧の変化を感じとり、前庭神経を介して脳に情報を送る。すると自律神経のバランスが乱れ、主に交感神経が興奮。痛みの神経とくっつけば慢性痛、血管が収縮すれば頭痛・肩こりなどが起こる。
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