からだ

しんどさを生む「気象病」とは?

  • イラストレーション・木下綾乃 文・石飛カノ

体に影響を及ぼすのはこんな気候。

実は天候と不調の関係については、昔から数多くの研究がなされてきた。

たとえば気温。慢性痛をもつ多くの人は気温が低いときに痛みの症状が強く出て、気温が高くなると和らぐことが分かっている。湿度も人に影響を与えていて、同じ気温でも湿度が高ければ熱中症になりやすく、リウマチなどの痛みは湿度が高いほど強く感じられるという。

低気圧が近づいて雨が降ったり、台風が接近するときは雨が蒸発して気温が下がり、湿度が上がり、気圧が下がる。この3本柱で痛みや不調が現れる。ただ、気象病のカギである気圧は温度や湿度のようにはっきり自覚できないというのが厄介なところ。

「とくに台風のときは、落ち着きがなくなったりザワザワした気分になったりと特別な症状が出ることも。今後温暖化が進むと気圧の変動が今まで以上に大きくなり、台風のできる場所が日本に近づいてくるかもしれません。気象病は確実に増えていくと思います」

「変化」こそが不調の大敵。

では、低い気圧が気象病を引き起こすかというと、答えは否。

「気象病の患者さんは気圧が高い低いというより、変化に反応しています。同じ気圧が一定時間続くと、血圧や心拍の上昇といった自律神経の反応が沈静化します。気圧の変わりばなに反応が上がって、その後、多くは普通の状態に戻るのです」

[低気圧による天気痛の再現]のグラフのように、慢性痛を抱えている人の実験では気圧が下がったときに痛みの指数が上がり、気圧が一定に保たれているときは痛み指数が低下する。そして、気圧が上がるときに再び痛み指数が上昇。内耳が感知しているのは、気圧の数値ではなく変化であることが分かる。

「これは匂いの感覚と似ています。匂いの感覚は敏感ですが、その場に居続けると慣れてしまう。敏感だけれど慣れやすい。人の五感にはさまざまな特性がありますが、私は第六感、シックスセンスのような気圧感覚が人にはあると思っています」

[低気圧による天気痛の再現]

天気変化と痛み Anesthesia Network 15(1):32-34、2011より引用改変

気象病の患者に人工的に気圧を変えられる部屋に入ってもらい、症状の変化を観察。棒グラフが痛み指数。気圧の下げ始めで痛みが悪化し、下がりきると痛みが弱まった。元の気圧に戻すときに再び痛みが悪化。

 

『クロワッサン』1022号より

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