手のこわばりが強くなり、ペットボトルのフタも開けにくくなっています。【87歳の現役婦人科医師 Dr.野末の女性ホルモン講座】
撮影・岩本慶三 イラストレーション・小迎裕美子 構成・越川典子
Q. 手のこわばりが強くなり、ペットボトルのフタも開けにくくなっています。
手指のむくみやこわばりが続いていました。熱ももっている気がしてリウマチ科で検査をしたのですが、陰性でした。整形外科でも、とくに問題がないと言われたのですが、こわばり感、熱っぽさは続いていて、ボタンがかけにくくなったり、ペットボトルのフタが開けにくくなったり、生活に支障が出ています。もしかしたら更年期症状なのでしょうか。閉経はまだですが、そろそろかなというタイミングです。(A・Eさん 51歳 会社員)
A. 手指の関節痛、リウマチでなければ女性医療を頼りましょう
なめらかに動かないなど、手指にちょっとした違和感があるだけでも不便を感じるものです。A・Eさんのように、ボタンがかけにくくなる、ペットボトルのフタが開けにくいというレベルから、もっと症状がすすむと、パソコンのキーボードを打つだけで痛い、包丁も痛くて握れない、缶詰のプルトップを引けない、ハンドルを握れないので運転をあきらめた……など、生活への影響が大きいのが手指の関節痛です。
整形外科に行っても「年のせい」「あまり動かさないように」と言われるだけ。いくつかの病院をまわって、最後に更年期外来においでになる患者さんもいます。
更年期障害の訴えの中で、手のこわばりや痛み、関節痛はとても多いのです。関節にある腱や滑膜にも、女性ホルモンであるエストロゲンの受容体があるからです。エストロゲンが減ることで様々な症状が出るわけですが、女性特有の変化に原因があることに気づかないのですね。
変形性関節症は、命にかかわる病気ではありませんが、女性にとっては大問題です。毎日目にする自分の手が、関節が腫れて変形していくのは、つらいですね。よくある症例は、第一関節が腫れるヘバーデン結節、第二関節が腫れるブシャール結節など。症状がすすむと指がごつごつして、見栄えも気になります。
手指の痛みの発症年齢比較
A・Eさんは、リウマチ検査をお受けになって陰性という結果が出ているということですから、一度、更年期外来で相談なさるといいでしょう。女性ホルモン補充療法(HRT)は、関節痛発症を予防する可能性があることもわかっています(『HRTガイドライン(2017年度版)』より)。私の患者さんの中にも、HRTをすることで症状が改善された例は少なくありません。
更年期世代の約75%が働いている今、「患者の生活のしやすさ」は、医療の本質にかかわる大事な問題です。命を救うだけではなく、女性の年齢変化にどう応えていくかは、これからも私にとって大きなテーマです。
※症状や治療法には個人差があります。必ず専門医にご相談ください。
更年期由来の不調は全身どこにでも出ると心得る。(Dr.野末)
野末悦子(のずえ・えつこ)●産婦人科医師、久地診療所婦人科医。横浜市立大学医学部卒業。川崎協同病院副院長、コスモス女性クリニック院長、介護老人保健施設「樹の丘」施設長などをへて現職。
『クロワッサン』1019号より
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