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転んだことがきっかけで急に、足腰に不安が出てきました。【87歳の現役婦人科医師 Dr.野末の女性ホルモン講座】

撮影・岩本慶三 イラストレーション・小迎裕美子 構成・越川典子

野末悦子さん 産婦人科医師、久地診療所婦人科医
野末悦子さん 産婦人科医師、久地診療所婦人科医

Q. 転んだことがきっかけで 急に、足腰に不安が出てきました。

先日、朝ベッドから下りるときに転んで、足首を捻挫してしまいました。そういえば、つまずいたり、よろけたりすることが増えたと気づいて、ショックを受けています。「転倒して骨折」という記事を目にしても高齢者の話と思っていましたが、まだ40代の私が、まさか……と。このままでいいのか不安になり、お便りしました。治療をする、とまではいかないと思うのですが。(D・Tさん 49歳 主婦)

A. 筋力もバランス感覚も低下していきます。今、立て直すときです。

まだ若いと思っていたのに、カラダがついていかない。誰にも覚えがあるのではないでしょうか。D・Tさんのように、朝の起き抜けや夜中のトイレ時に転倒する例は、実は少なくありません。朝は起きてすぐに動かず、ベッドの中でカラダを伸ばしたり、手足をもちあげてぶらぶら運動させたりしてから起きるだけでも違います。

さて、D・Tさんは「まだ40代」とおっしゃるけれど、決して油断しないでほしいと思います。個人差はありますが、カラダを守ってきた女性ホルモンであるエストロゲンが減少しつつある年齢だという自覚はもってくださいね。今は捻挫程度ですんでいても、閉経以降は筋力や敏速性、バランス感覚は低下して、関節の可動域も狭くなっていきます。同時に、骨密度も急速に減少するので、骨折リスクも上がります。

転倒災害被災者の性別・年齢別比較

職場での転倒災害被災者の68%が高年齢であり、とくに中高年の女性の転倒災害が多いことがわかる。厚労省「平成30年労働災害発生状況の分析等」より作成
職場での転倒災害被災者の68%が高年齢であり、とくに中高年の女性の転倒災害が多いことがわかる。厚労省「平成30年労働災害発生状況の分析等」より作成

まず、ご自分のカラダの状況を知ることが大事です。一度、更年期外来にいらして、女性ホルモン量や骨量などを調べておくといいですね。必要とあれば、骨密度の維持のためにホルモン補充療法(HRT)などの治療を検討してもいいでしょう。

エストロゲンレベルが低いほど姿勢バランス機能が悪いこと(60歳以上)、HRTはそれを有意に改善することもわかっています。また、筋力や運動能力の維持にもHRTは有効だという報告もあります(『ホルモン補充療法ガイドライン2017年度版』より)。

同時に見直すべきは、食事と運動です。D・Tさん、タンパク質やビタミンなど摂れていますでしょうか。自己流のダイエットが骨量低下につながることもあります。ビタミンD生成のために、ウォーキングなどで適度に日光に当たることも必要です。スクワットなど、ムリのない範囲で筋トレも始めましょう。何もしないでいると、筋肉は落ちていく一方です。もし骨折をすると、完治するまで動かせなくなった筋肉はさらに落ちますし、運動機能が低下することは生活の質(QOL)低下に直結しているのです。

※症状や治療法には個人差があります。必ず専門医にご相談ください。

 40代からは、美容よりも一に筋力、二に骨密度。(Dr.野末)

転んだことがきっかけで急に、足腰に不安が出てきました。【87歳の現役婦人科医師 Dr.野末の女性ホルモン講座】

野末悦子(のずえ・えつこ)●産婦人科医師、久地診療所婦人科医。横浜市立大学医学部卒業。川崎協同病院副院長、コスモス女性クリニック院長、介護老人保健施設「樹の丘」施設長などをへて現職。

『クロワッサン』1018号より

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