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「加齢黄斑変性」ってどんな病気? 症状、治療法は? 専門医に聞いた。

年齢とともに顕著にあらわれるのが、目の不調。人生100年時代だからこそ目の健康を保ち、楽しく生きていきたい。東京女子医科大学 教授の飯田知弘さんにお話を伺います。

撮影・中島慶子 イラストレーション・内山弘隆

視野の中心がゆがむ、暗く見える→加齢黄斑変性かも?

いくつ当てはまりますか?

CHECK LIST

□ ものがゆがんで見えることがある
□ ヘビースモーカーである
□ 日光を浴びることが多い
□ 水やお茶を注ぐときにこぼすことがある
□ 買い物のときに値札が見えないことがある
□ 中心部が暗く見えにくい

Q.加齢黄斑変性とは、どんな病気?

網膜の黄斑部が酸化により傷むことで視力が低下したりゆがんで見えたりする。

その名のとおり、加齢とともに増加する加齢黄斑変性。

「黄斑部とは、網膜の中央にあり、ものを見るのに必要な視細胞が集中している部分。中でも黄斑部の中心にある中心窩(か)という小さなくぼみには多くの視細胞が集まっていて、視力と非常に関わりが深い。この黄斑部が障害されると、網膜の他の部分に障害がなくても、目の機能が著しく低下します。視野の中心がゆがむため、目にするものもゆがんで見えてきたりします」

加齢黄斑変性は50歳以上の発症が多く、そして男性のほうが多いことがわかっている。

「体質や遺伝的要素もありますが、酸化ストレスにさらされやすいことが原因なので、そういった環境で過ごしている人もリスクは高いです。代表的なのがタバコ。喫煙者は非喫煙者に比べ明らかに発症率が高いことが確認されています。また屋外で太陽光を浴びる時間が長い人や、不規則で栄養バランスの乱れた食生活を送っている人もリスクが高いです」

生活習慣の積み重ねが発症につながることもある、加齢黄斑変性。三大眼疾患(緑内障、白内障、加齢黄斑変性)の中で唯一、進行を防ぐことができるので、日々の過ごし方を見直してみるのもいいだろう。

【健康な目の見え方】水晶体を通って入ってきた光は、中心窩に集中する視細胞でとらえられることで、色や形などをはっきる見ることができる。
【健康な目の見え方】水晶体を通って入ってきた光は、中心窩に集中する視細胞でとらえられることで、色や形などをはっきる見ることができる。
【加齢黄斑変性の見え方】黄斑部が傷むと、ものがゆがんで見えたり、視野の中心がゆがんだりするという症状があらわれる。
【加齢黄斑変性の見え方】黄斑部が傷むと、ものがゆがんで見えたり、視野の中心がゆがんだりするという症状があらわれる。
【健康な目の見え方】水晶体を通って入ってきた光は、中心窩に集中する視細胞でとらえられることで、色や形などをはっきる見ることができる。
【加齢黄斑変性の見え方】黄斑部が傷むと、ものがゆがんで見えたり、視野の中心がゆがんだりするという症状があらわれる。
【健康な黄斑部】黄斑部は、網膜の中央の部分。健康な黄斑部は中心窩がへこんでいる。
【健康な黄斑部】黄斑部は、網膜の中央の部分。健康な黄斑部は中心窩がへこんでいる。
【加齢黄斑変性の黄斑部】黄斑部に老廃物がたまったり、異常な血管(新生血管)ができ液体成分が漏れたりすると、黄斑部が傷んでしまう。
【加齢黄斑変性の黄斑部】黄斑部に老廃物がたまったり、異常な血管(新生血管)ができ液体成分が漏れたりすると、黄斑部が傷んでしまう。
【健康な黄斑部】黄斑部は、網膜の中央の部分。健康な黄斑部は中心窩がへこんでいる。
【加齢黄斑変性の黄斑部】黄斑部に老廃物がたまったり、異常な血管(新生血管)ができ液体成分が漏れたりすると、黄斑部が傷んでしまう。

Q.加齢黄斑変性になるとどんな症状があらわれる?

ものがゆがんで見えること以外にも、中心部が暗く見えたり、視力低下などが。

「特徴的な症状としては、視野の中心がゆがんで見えることです。ほかにも、視野の中心部分が暗く見えたり、ぼやけたり、急激に視力が低下したりといった症状が起こることもあります。見たい所が見にくくなるのが、この病気の怖い点です。ただ、他の眼疾患と同様、両方の目で補い合って見えてしまうため、進行していないうちは気づきにくいので、初期にはなかなか自覚することはありません」

ちょっとした変化に気づくことが早期発見の鍵。

「片方の目の視力低下は遠近感がとりにくいという症状で自覚されることもあります。お茶を注ぐときに急須と湯呑みの距離感がつかめなくてうまく注げなかったり、何かの作業中に自分の手元がよく見えなかったりしたら要注意です」

「また、黄斑円孔や黄斑上膜(網膜上膜)、黄斑浮腫など、黄斑部に病気があると、加齢黄斑変性でなくとも視野はゆがみます」

病気によって治療法はそれぞれ異なるが、眼科の検査ですぐ診断することができる。

遠近感がつかめなくなるので、急須で湯呑みにお茶を注ごうとしてもこぼしてしまったり、また中心部が暗くぼやけてしまうことも。
遠近感がつかめなくなるので、急須で湯呑みにお茶を注ごうとしてもこぼしてしまったり、また中心部が暗くぼやけてしまうことも。

Q.加齢黄斑変性の治療法は?また簡単な自己チェック法は?

最近、治療が著しく進歩。効果の高い抗VEGF療法が主流。

加齢黄斑変性は、加齢により老廃物がたまり、黄斑部に異常なもろい血管(新生血管)ができる滲出型と、組織が萎縮する萎縮型の2タイプがあり、日本人の約9割は滲出型。そして滲出型は進行が比較的早いので、すぐに治療が必要だ。

「注射による抗VEGF療法、光線力学療法(PDT)、レーザー凝固の3つの治療法があり、多くの場合はまず抗VEGF療法を選択します。目に注射を打つと聞くと怖いと思われがちですが、1分程度の治療ですし、終わってみると『あ、こんなものだったの』とみなさん仰います」

ただし抗VEGF療法は、新生血管が新たに発生するのを防ぎむくみを抑えるという治療法のため、繰り返し行う必要がある。

「通常、最初は月1回の注射を3回続け、その後は効果を見ながら間隔を開けていきます」

その前段階として、日ごろから自己チェックをしておきたい。

「眼科でも行うアムスラー検査は、チャートを使えば自宅でもできます。日ごろから自分の見え方を意識することで、加齢黄斑変性の初期症状に気づくことが可能です」

すべての眼疾患に重要なのは、早期発見。そのためにも、気軽に眼科を訪れる習慣をつけるとよい。
すべての眼疾患に重要なのは、早期発見。そのためにも、気軽に眼科を訪れる習慣をつけるとよい。
「加齢黄斑変性」ってどんな病気?  症状、治療法は? 専門医に聞いた。

飯田知弘(いいだ・ともひろ)さん●東京女子医科大学 教授。日本眼科学会常務理事、日本網膜硝子体学会理事、日本眼循環学会理事。加齢黄斑変性など黄斑・網膜疾患を専門とし、外来も受け持つ。メディア出演も多く、また趣味の考古学研究は玄人はだし。

『クロワッサン』1016号より

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