更年期の治療って、医師が決めるもの?それとも患者の私が?【87歳の現役婦人科医師 Dr.野末の女性ホルモン講座】
イラストレーション・小迎裕美子 撮影・岩本慶三 構成・越川典子
Q. 更年期の治療って、医師が決めるもの?それとも患者の私が?
今47歳です。野末先生の連載を読んで、私の症状は更年期障害かもしれないと思い、婦人科へ行ってきました。血液検査をして、医師からは「更年期の入り口だね」と言われましたが、とくに治療が必要とも言われず、そのまま帰宅。ただ、疲れがとれなかったり、肩こりもひどくなったり、今までと違うのはたしかなのです。できれば、治療を始めたいのですが、医師にそう伝えていいものでしょうか。(C・Mさん 47歳 自営業)
A. 更年期医療は自分で選ぶものです。医師に伝えましょう。
治療を始めたほうがよいかどうか、医師に確認できなかったのですね。C・Mさんからすれば「医師からもっと説明があってしかるべき」と思ってしまうーーもやもやが残る結果となってしまいましたね。実は、同様のご相談はよくあるのです。
更年期医療を専門としている医師ならば、「こういう治療法がありますが、どうしますか」と提示をすることが当然と考えますが、医師によっては「患者本人の訴えがないので、まだ治療を必要としていないようだ」と判断してしまうわけです。
実際、エストロゲンが減少することで引き起こされる更年期障害の治療は、QOL(生活の質)を維持するためのもの。急を要する、生命に関わる病気とは異なります。でも、だからといって「我慢するしかない」と思わないでください。閉経後、30年、40年生きる時代です。QOLがどんなに大切か、考えればわかりますね。
C・Mさん、更年期の治療は「自分で決める」ことです。それも「納得して決める」こと。更年期医療に限らず、すべての医療において同じことが言えます。あやふやなまま治療を始めると、こんなはずじゃなかったと後悔したり、副反応に過剰に驚いてしまったり、効果的に治療を続けられない場合も少なくありません。
では、治療開始の基準は何か。
ホットフラッシュ、のぼせ、冷え、頭痛、肩こり、関節痛、イライラ、うつ気分……更年期の諸症状は100とも200とも言われますが、それが日常に支障をきたすようになると「更年期障害」として治療対象の病気となるわけです。つまり、血液検査の結果も大事ですが、C・Mさん自身がどう感じているか、どうなりたいのか、が治療に関わってくるわけです。
HRTについての知識を得ながら、自分の気持ちを確かめ、意思決定できるガイドブックもできました(左上写真)。「NPO法人更年期と加齢のヘルスケア」で入手できますので、試して医師とのコミュニケーションに役立ててはいかがでしょう。
※症状や治療法には個人差があります。必ず専門医にご相談ください。
【「HRT意思決定ガイド」を活用してみよう】
人は、死ぬまで自由。何を選択するかは自分で決める。(Dr.野末)
野末悦子(のずえ・えつこ)●産婦人科医師、久地診療所婦人科医。横浜市立大学医学部卒業。川崎協同病院副院長、コスモス女性クリニック院長、介護老人保健施設「樹の丘」施設長などをへて現職。
『クロワッサン』1011号より
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