からだ

うつうつした気分がずっと続いています。更年期と関係ありますか。【87歳の現役婦人科医師 Dr.野末の女性ホルモン講座】

  • イラストレーション・小迎裕美子 撮影・岩本慶三 構成・越川典子
野末悦子さん 産婦人科医師、久地診療所婦人科医

Q.うつうつした気分がずっと続いています。更年期と関係ありますか。

更年期が原因かどうかわからないのですが、聞いていただけますでしょうか。ここ半年ほど、うつうつとした気分が続いています。急に泣きたくなったり、車でスピードが出ると怖くて、ドキドキがひどくなったり。今では地下鉄に乗るのも不安で、仕事をやめようかどうか悩んでいるんです。精神科に行く勇気がなくて、婦人科でも診てもらえるものなのでしょうか。月経はもうほとんどありません。(M・Kさん 50歳 会社員)

A.まず更年期外来で診てもらいましょう。他科に行くのはその後です。

仕事に通えなくなるほど、気持ちが落ち込んでいるのですね。さぞかし、おつらいでしょう。

更年期に不安感や無気力などを感じるのは、実はよくあることなのです。更年期症状の訴えのうち、何らかの精神的な症状が46%あることもわかっています(女性の健康とメノポーズ協会・電話相談より)。

40代、50代は、身体的にも社会的にもさまざまな問題を抱えがちです。母親・妻として家庭での育児・家事を担い、子どもの受験や就職試験、親の介護、地域や学校での活動、仕事の責任も重くなる。いわゆるワンオペレーション、一人で多くを背負っている人が少なくありません。更年期は、卵巣機能の低下×環境的要因×気質などの3つの要因が複雑に絡んでいるといわれる理由ですね。

うつうつした気分が更年期障害によるものなのか、ほかに原因があるのかどうか、M・Kさんご自身では判断できないと思います。月経はないようですし、年齢的にも更年期に入っていると思われるので、まず「更年期外来」などの婦人科で検査してみましょう。血液検査などをして、更年期障害という診断がされれば、ホルモン補充療法(HRT)や漢方などで治療を始められます。もちろん、そのときは保険診療が適用されます。

治療を続けても改善がみられなかった場合は、精神科ではなく、心療内科にいらしてみてください。かかっている婦人科から紹介状を書いてもらい、受診するようにしましょう。婦人科の医師と相談して、心療内科と連携し、同時に治療をすることも可能です。

【更年期によくみられる精神症状をチェック】

◻︎ うつ気分、イライラする、不安感
◻︎ 不眠
◻︎ 動悸(ドキドキ)、パニック感
◻︎ 疲れやすい、無気力
◻︎ 外出できない、人に会いたくない
◻︎ 判断力・集中力の低下

更年期にはさまざまな症状がみられるが、身体的症状のほかに、メンタル面の影響も大きい。よくある症状をチェックしてみよう。女性の健康とメノポーズ協会『年代別 女性の健康と働き方』より作成

なぜ更年期外来の医師から紹介してもらうほうがよいかというと、心療内科といっても、更年期に「精神症状」が起こりやすいことをよく理解していない医師もいるからです。

できれば、更年期外来の医師を「かかりつけ医」にするとよいですね。私は今、週に2回、クリニックで診療をしていますが、患者さんの中には、家族3世代で通院しておられるケースもあるんですよ。長年のおつき合いで、70代、80代になっても、年に1回、海外や地方から私のところにおいでになる方もいます。

私は婦人科ですが、患者さんの生活環境や検診の結果を見て、さまざまなアドバイスをしますし、必要ならば他科の専門医に紹介もします。予防できる病気は防ぎたい。よい治療を受けてもらいたい。健康は、楽しく人生を送る大きな要素です。私が今でも他科の学術集会にもできるだけ出席しているのは、こういった理由があるのです。

※症状や治療法には個人差があります。必ず専門医にご相談ください。

何でも相談できる婦人科のかかりつけがあると安心。(Dr.野末)

野末悦子(のずえ・えつこ)●産婦人科医師、久地診療所婦人科医。横浜市立大学医学部卒業。川崎協同病院副院長、コスモス女性クリニック院長、介護老人保健施設「樹の丘」施設長などをへて現職。

『クロワッサン』1006号より

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