からだ

乾燥、不安、動機、ぽっこりお腹編。更年期症状の傾向と対策。

更年期の入り口に差しかかった体の中ではいったい何が起きているのでしょうか。女性ホルモンの働きから症状までドクター、小川真里子さんに聞きました。
  • 撮影・土佐麻理子(横森さん)、青木和義(山崎さん) イラストレーション・小迎裕美子 文・南雲つぐみ

多くの人が遭遇しやすい代表的な更年期症状について、その傾向と対策とは?

【乾燥】

乾燥は皮膚のかゆみ・くすみ、歯周病、性交痛の原因にも。

「乾燥するのは、皮膚だけではありません。ドライアイ、ドライマウス(口の乾き)をはじめ、腟の違和感や痛みまで、女性ホルモンが失われることで、全身のあちらこちらが潤いを失って、乾燥していきます」

女性ホルモンは、皮膚や粘膜では弾力成分のコラーゲンやエラスチンをつなぎとめる役割をしている。そのため、女性ホルモンが減少してしまう更年期以降は、皮膚表面が乾燥して薄くなり、潤いが失われてしまうことに。

症状のひとつであるドライアイは、40代以降の女性の罹患率が高いことが知られている。また、口の中では、粘膜が乾燥することにより歯周病菌が増殖しやすくなるといわれている。

そうした症状を緩和するとされるホルモン補充療法は、女性ホルモンが皮膚のコラーゲン量を増加させることで皮膚や粘膜の厚みを増し、弾力性を取り戻すことにもつながる。

「皮膚のかさつきやかゆみの改善には効果があることがわかっています。『補充療法をしてからお化粧のりがよくなった』という人もいるようです」

腟では、女性ホルモンがなくなると分泌液が減って乾燥しやすくなり、粘膜も薄くなるため、ちょっとした刺激にも傷つきやすくなる。腟のかゆみや違和感(乾燥感)、痛み、尿がしみる、尿もれなどの症状は、閉経後年齢とともに悪くなっていく。

「悩んでいる人がとても多いのは、実は性交痛です。婦人科医にも言いにくいようで、他の症状で受診され、ついでに相談される方がほとんど。『あなた一人ではないですよ』ということは、ぜひお伝えしておきたいです」

対処法も知っておこう。まずホルモン補充療法には腟剤があり、腟炎や性交痛には良い効果を発揮する。また、潤滑ゼリーもあり、婦人科クリニックや調剤薬局で取り扱っているものも。

乾燥による体のトラブルは、加齢とともにひどくなる。早めに対処しよう。

【動悸】

ドキドキや息苦しさのほか、のどのつかえ、イガイガ感も。

動悸は、ほてりと同じ“血管運動神経症状”のひとつで、自律神経失調や不安とも関連するといわれる。

「夜、布団に入るとドキドキが強くなり、『このまま息が止まったらどうしよう』と眠れなくなってしまう人も」

動悸があるとき、脈をとると実際に1分間に100回以上の頻脈になっていることもあるが、

「1回の動悸が短く、1日に数分間ぐらいなら問題はありません。もし、動悸の時間が長かったり、胸の圧迫痛があるときは、循環器内科などで検査を受けてください」

胸の痛みは心臓だけではなく、逆流性食道炎や胃炎、肺や気管支、のどの炎症が原因のこともある。一方、

「検査を受けて病気がない場合、精神的な不安やストレスが原因で、動悸や息苦しさ、のどのつかえが起きていることもあります」

ストレスの原因は置かれた状況や、その人の気質によっても違う。子どものPTAで苦手な人に会うとか、夫の実家に帰省する前に、動悸や胸のつかえを感じる人は多いそう。人づきあいが得意でまとめ役をしてきた人でも、更年期に入って体力がなくなると心の負担になり、症状として出てくることが。

「半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)が体に合えば、動悸や息苦しさをやわらげるのに役立ちます」

まずは重大な病気がないことを確認したら、落ち着いて漢方薬などで対処しよう。

【不安】

なぜかわからない不安が、さまざまな不調を作り出す。

大きな問題があるわけではないのに、何となく不安で外にも出たくなくなる。ちょっとした不調もあれこれ考えすぎて、大きな病気に思えてしまう。これらはどちらも、“全般性不安障害”といわれる状態だ。

「更年期には、突然、動悸やめまい、発汗、手足の震えなどが起きる“パニック障害”が起きやすいのですが、“全般性不安障害”のような漠然とした不安にかられて、何もやりたくないし、楽しめないという状態になってしまうこともあります」

人に会いたくないので、友人の誘いを断っているうち、付き合いが疎遠になっていく。誰にも話せないのでますます不安が募り、悪いことばかり考えるという悪循環になってしまうことも。

「不安は、イライラと同様、ハッピーホルモンである女性ホルモンが体から失われたことに関係して起きると考えられます。そして、この不安こそが更年期症状を深刻にさせる大もとになっているのかもしれません」

全般性不安障害のせいで肩こりやめまいが起こり、状態が進むと、うつ病やパニック障害などを併発する可能性もあるといわれている。

「『今までの自分と違う』と感じているようなら、うつ傾向が強くなっています。心療内科などへの受診も必要です」

心配性や神経質な人とも捉えられがちだが、強い不安も症状のひとつと知っておこう。

【ぽっこりお腹】

閉経後の体重は、増えやすく落としにくい。

更年期症状がとてもつらいときには、食欲もなくなるので体重やお腹の脂肪は気にならないかもしれない。が、不調がヤマを越えたり、更年期治療を行って症状が和らいでくると、腹部のぜい肉は女性の共通課題だ。

ウエストのくびれは女性ホルモンのなせる技といわれるが、

「女性ホルモンがなくなるだけでなく、男性ホルモン優位になること、そして加齢が関係して、閉経後の女性は内臓脂肪が増加していきます」

なんと、1年に0.5〜1キロずつ体重が増加するデータがあるそうだ。

「ホルモン補充療法をしたら太ったという人がよくいますが、閉経後はエストロゲンを足しても足さなくても体重は増えるのです」

下腹についた脂肪は、内臓を包んでいる腸間膜につく“内臓脂肪”。お腹には内臓を覆う骨がないので、腹筋が落ちるとぽこっと出っ張ってしまう。この対策としては、とにかく「食べすぎない」ということだ。

「今日たくさん食べてしまったから、明日は食べないようにしようと思っても、なかなか節制できないですね。基礎代謝も下がっているので、取り込んだエネルギーを消費しにくいのです」

脂肪を燃やすには、筋肉をつけることも大事だ。とはいえ、毎日30分歩くとかジムに通うなど、きっちりした予定を立ててしまうと、実行するのにハードルが高くなってしまう。

「女性は家でも忙しいので、これまで運動習慣のない人は外に出るだけでも大変。ネットで楽しそうなエクササイズ動画を見つけ、好きな時間にやってみるのはどうでしょう」

体を動かすことはメタボ予防だけでなく気分転換にもなり、更年期症状の緩和にもいい。筋肉が骨を支えているので、筋肉をつけることは骨粗鬆症による骨折の予防にもなってくれる。

バランスのよい食事と運動の習慣は、メタボだけでなく骨粗鬆症の骨折予防にも効果が。

小川真里子(おがわ・まりこ)さん●東京歯科大学市川総合病院産婦人科准教授。福島県立医科大学卒業。慶應義塾大学産婦人科等を経て現職。日本女性医学学会女性ヘルスケア専門医、指導医ほか。

『クロワッサン』1006号より

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