からだ

まずはきちんと知ることから!更年期を前向きに乗り越えよう。

更年期の入り口に差しかかった体の中ではいったい何が起きているのでしょうか。女性ホルモンの働きから症状までドクター、小川真里子さんに聞きました。
  • 撮影・土佐麻理子(横森さん)、青木和義(山崎さん) イラストレーション・小迎裕美子 文・南雲つぐみ

更年期は「月経周期の乱れ」「自覚症状」「女性ホルモン値」でチェック!

更年期を迎えると、体はどう変化していくのか。

更年期に入って特徴的に起こるのは、まず月経の変化。27日周期などで規則的に来ていた人も、次第に周期が短くなったり、とびとびになったりする。出血量も「先月は茶色い出血が少量だったのに、今月はドカッと大出血」「出血がダラダラと長引く」と、予測がつかなくなってしまう。

「この時期のバラバラな月経や大出血は、卵胞刺激ホルモン(FSH)が引き起こしていることが多いのです」

というのは、東京歯科大学市川総合病院産婦人科の小川真里子さん。

閉経とは、卵巣の中に卵胞がなくなり、排卵が終わるとき。エストロゲン(E2)は排卵に伴って分泌される女性ホルモンなので、閉経に近づくと減少する。FSHは、それを分泌させようと活発に働き、卵胞を刺激する働きをする。このため、閉経前にFSHが上昇し、排卵を起こして思わぬ大出血を起こさせたり、自律神経に影響を与えて更年期症状が強く出たりするのだ。

「女性ホルモン検査では、E2とFSHの2つを測定します。閉経前のエストロゲン値は日内変動もありますが、FSHはずっと上昇し、更年期症状かどうかのチェックに役立ちます」

我慢してやりすごすよりも、対処法を知っておけば安心。

月経不順や閉経に伴い、のぼせや汗、めまい、疲れやすさ、眠りが浅い、皮膚の乾燥やかゆみなど、さまざまな不調が起こってくる。ひとつひとつは小さな症状でも、組み合わされて複合的なつらさになっていくのも、更年期症状の特徴だ。閉経を迎えると、全ての女性のエストロゲンは減少していくけれど、どんな症状がどのように起こるのか、そしてその深刻さは人それぞれ。我慢して過ごすより、つらい間だけでもホルモン補充療法(HRT)や漢方薬を使って和らげ、更年期とうまく付き合おう。

患者さんには、更年期症状の市販薬のこともよく聞かれるという、小川さん。

「何がいいかは比較試験が行われているわけではないのでわかりませんが、飲んでみて症状が改善されているようなら、それでよいでしょう。もし、1~2カ月飲んでみて効果を感じないなら、別の病気かもしれません。漫然と続けず、婦人科受診を考えてください」

エストロゲンは非常に強い抗酸化物質でもあり、女性の全身を病気から守ってくれている。これがなくなることで骨や血管にも影響が起こり、骨粗鬆症、脂質異常症、動脈硬化などの生活習慣病、腟炎、歯周病なども起こりやすくなる。中でも、20歳でピークを迎える骨量は、閉経して女性ホルモンが下がると減っていくばかりになる。まずは、今後の対策のためにも、現在の骨量をきちんと把握することが大事。

「スタートの数値を知るという意味で、更年期に入ったら、一度は病院で骨量を測っておくことをおすすめします」

不調が出やすい40代、更年期障害とは別の場合も。

40代で月経がある状態では、更年期症状のように思えるめまいやイライラが、PMS(月経前症候群)によって起きていることもある。

「PMSは、月経前の1週間に症状がひどく月経後は症状がないというように、月経周期と連動して起こる。更年期症状にはこのような波はないのですが、自分では見極めにくいかも」

ほかに、更年期の症状に似た病気には、どんなものがあるのだろう。

「まず、バセドウ病や橋本病といった、甲状腺機能障害です。もともと女性に多い病気で、バセドウ病ではイライラやほてり、橋本病ではむくみやだるさなどが出るので、更年期と思い込み我慢してしまう人もいるのです」

また、女性の40代はうつ病の好発期にもあたる。指のこわばりや関節の痛みは、リウマチの場合も。肝機能障害や貧血が原因で、疲れやすさやだるさ、意欲の低下が起きていることもある。

「子宮筋腫や子宮内膜症があると出血が増え、また月経も長引く傾向があるため、貧血が進行してしまいます」

子宮がん検診はこうした子宮の状態チェックにもなるのでぜひ受けよう。

「更年期症状かなと思うとき、ホルモン補充療法を行っても効かないことがあります。その場合は、女性ホルモン低下によるものではないという証明でもあり、別の病気を見つけるきっかけにもなります」

更年期症状を我慢せず、一度は受診することは、こうした隠れた病気の発見にもつながる。

小川真里子(おがわ・まりこ)さん●東京歯科大学市川総合病院産婦人科准教授。福島県立医科大学卒業。慶應義塾大学産婦人科等を経て現職。日本女性医学学会女性ヘルスケア専門医、指導医ほか。

『クロワッサン』1006号より

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