唾液があまり出ないのは、加齢が原因ではありません。
撮影・岩本慶三 イラストレーション・川野郁代、山下カヨコ
「見えないところで活躍をしている“唾液力”の大切さについて、ずっと注目してきました」と語るのは、歯科医師の宝田恭子さん。唾液の役割で一番大切なのは、口腔内pH(ペーハー)をコントロールしていることだという。
「歯科医が重要視しているのは、口中のpHです。アルカリ性の食材も、口の中に入ったとたんに酸性になってしまう。それが続くと、歯の表面が徐々に溶けて虫歯の原因に。その臨界点はpH5.5とされています。唾液はpH7.2で中性。唾液で潤っていれば、歯は衝撃を受けず、外から入ってくる悪い菌もシャットアウトできます」
食後は早く口腔内を中性に戻す。
長時間かけて食事をすると、それだけ歯の表面を酸性の状態にさらし続けていることに。そのため、食事のあとはできるだけ早く中性に戻すことが必要になってくる。
「子どもであれば、自らの唾液の力で30分もすれば中性に戻ります。が、歯間が開いている人が多い中年以降は、食後はすぐに口をすすいで、食べ物の滓(かす)を出すようにしたほうがいい。吐き出せない場合は、口の中でぐるぐると水をまわしてから飲み込むようにして」
食後は水を飲んで、まずは口腔内を中性に戻してから、唾液で歯の表面をコーティングするようにしたい。
唾液で潤うと、口腔環境は整う。
唾液には、歯の表面のエナメル質を修復すると同時に、味覚を感じたり、消化を促すという働きも。また、口中を乾燥から守るのも唾液の役目。
「口を閉じて潤ってさえいれば、口腔内の環境は整います。逆に乾燥していると風邪を引きやすくなってしまったり。最終的に、唾液の分泌は身体全体のケアにつながっているんです」
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