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【庭を楽しむ 平井かずみさん】自然のままを受け入れる、庭も花生けも同じです。【前編】

5月にはバラ、6月にはアジサイ。花と緑が調和する小さな庭が、花生けについて教えてくれること。

撮影・徳永 彩

雨降りの前には庭に出て、可憐なバラを贅沢に摘んで。

5月には、9種類のバラが順に咲いていく。手前はラ・レーヌ・ヴィクトリア、アーチの上の白バラはフェリシテ・エ・ペルペチュ。
5月には、9種類のバラが順に咲いていく。手前はラ・レーヌ・ヴィクトリア、アーチの上の白バラはフェリシテ・エ・ペルペチュ。

キラキラとした初夏の光が差し込み、新緑の木々や色とりどりの草花に囲まれて、可憐なバラが咲き始める。本誌目次ページの連載でもお馴染みの平井かずみさん宅の、5月の庭の風景だ。

「一番好きな花は?と聞かれたら、やはりバラと答えます」という平井さん。18年前、念願かなって手に入れた10畳弱の広さの庭には100種類ほどの植物が共生しているが、バラは特別な存在。心惹かれるのは、原種やオールドローズと呼ばれる昔ながらの品種だ。
「ここに咲いている濃いピンクのラ・レーヌ・ヴィクトリアや蔓バラのポールズ・ヒマラヤン・ムスクもオールドローズです。華やかで強いイメージのバラとは少し違って、俯いたような咲き方や細くしなやかな茎、優しい表情がなんとも儚げで、愛おしく感じます」

柔らかな白に透き通ったピンク、アンティークピンク。3色のバラを少し無骨なミルク壺に生ければ、甘すぎないシックなしつらいに。
柔らかな白に透き通ったピンク、アンティークピンク。3色のバラを少し無骨なミルク壺に生ければ、甘すぎないシックなしつらいに。
上・窓際に飾れば、ふわりと漂う香りに癒やされる。/ブルーパフューム(バラ)
上・窓際に飾れば、ふわりと漂う香りに癒やされる。/ブルーパフューム(バラ)
柔らかな白に透き通ったピンク、アンティークピンク。3色のバラを少し無骨なミルク壺に生ければ、甘すぎないシックなしつらいに。
上・窓際に飾れば、ふわりと漂う香りに癒やされる。/ブルーパフューム(バラ)

庭でバラを育てる楽しみの一つが、思い切ってたくさん摘んだバラを、大胆に生けること。雨が降る前にだけ、自分に許している贅沢だという。
「咲き切ったバラは、強い雨に当たると散ってしまうので、惜しみなく摘んで花器に移します。生け方で気をつけたいのは、バランスを取り過ぎないこと。庭のバラは、横一列に並んで咲くことはありませんよね。だから部屋の中にしつらえるときにも、ありのままの姿に近いように、茎の長いもの、短いもの、少し下を向いているものなど、まちまちでいい。その凹凸感が、花生けに奥行きをもたらします」

庭の草花と合わせてブーケに。/グリーンアイス(バラ)、クリスマスローズ、ニゲラ、ハーデンベルギア、アゲラタム
庭の草花と合わせてブーケに。/グリーンアイス(バラ)、クリスマスローズ、ニゲラ、ハーデンベルギア、アゲラタム

庭で摘んだ花は、家の外と内を緩やかに繋げてくれる。そして、「外の景色を写し取るように花を生ける」。常々そう話す平井さんにとって、庭は花生けのヒントの宝庫ともいえる存在だ。
「どんな花合わせをしたらいいかわからないという人は多いですが、そんなときこそ、庭や自然の風景に目を向けてほしい。バラと同じ季節にはどんな草花が咲くんだろう、それを知るだけで花合わせの参考になります。今回作ったブーケでも、白いバラに合わせたのは、この時季にうちの庭に咲くクリスマスローズやニゲラなどの草花たち。同時季に咲くもの同士は当然のように相性が良く、いくつかの種類を混ぜてもしっくりまとまります」

気取らず、さりげなく、どこまでも自然体。そんな花生けの原点は、庭と暮らす日常にあるのだ。

フラワースタイリスト 平井かずみさん
フラワースタイリスト 平井かずみさん

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