女性ホルモンの働きと体との関わりを知って、美しさと健康をキープ。
撮影/黒川ひろみ イラストレーション /ノグチ・ユミコ
脳と卵巣が情報交換。 体を守る働きを
エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)は一定のサイクルで分泌され、妊娠や出産に備えます。エストロゲンは卵巣の中で排卵を待つ卵胞から分泌されて妊娠に備え、プロゲステロンは受精卵が子宮内でしっかり育つ態勢を整えます。
この2つがきちんと分泌されるように指令を出すのは脳の働き。脳の視床下部から、「性腺刺激ホルモン放出ホルモン」が分泌され、脳下垂体が卵胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモンを分泌することで、卵巣からエストロゲンとプロゲステロンが分泌されます。「分泌したよ」というサインは脳にフィードバックされ、この仕組みで分泌のバランスがとられます。
栄養不足やストレスを受けると脳は「妊娠しては危険」と異常を感じ、エストロゲンの分泌を止め、無月経などの不調が起こります。
2つの女性ホルモンとその働き
プロゲステロン (黄体ホルモン)
排卵後、卵巣内に残った卵胞が黄体に変化して分泌するホルモン。子宮内膜を柔らかくし、着床しやすくする。妊娠した場合、妊娠を継続するように働き、妊娠しなければ急激に減少して子宮内膜をはがして月経を起こし、リセットする。
エストロゲン (卵胞ホルモン)
卵胞刺激ホルモンによって、原始卵胞が成熟した卵胞となるときに分泌するホルモン。子宮内膜を厚くし、妊娠の準備をする。妊娠、出産に耐えられる健康を維持するために、皮膚、骨、脳、血管、消化器など全身の健康も支えるとされる。
量はわずかだけれど女性の体をがっつり守る
閉経までは、女性は男性に比べて脳血管疾患などの大病にかかる率が低いのですが、それは、エストロゲンが子宮だけでなく、全身をめぐり、あらゆる組織でホルモンレセプターと結びついて、妊娠や出産に耐えられる健康を維持しようとするからです。 逆に、更年期、閉経を過ぎると、この守り神がいなくなるため、生活習慣病などに心配りが必要。また、エストロゲンは骨の形成にも関わるので、骨粗しょう症対策も必要になります。わずかな量ですが、女性の体をしっかり守っているのです。その働きを知り、年齢に応じた対策を講じることが年を重ねても健康を保つ秘訣です。
1.妊娠しやすい体を作る
卵胞刺激ホルモンによって原始卵胞が成熟した卵胞になり、エストロゲンを分泌する。エストロゲンには子宮内膜を厚くして受精卵が着床しやすくしたり、妊娠しやすい体にする働きもある。プロゲステロンは主に子宮内膜の状態を整え、妊娠に備える。
2.妊娠から出産まで守る
妊娠すると、プロゲステロンが妊娠を継続するための働きを受けもつ。妊娠中は排卵を抑制し、また乳汁分泌の準備にも関わる。
その他の役割は……
● 骨のカルシウムが溶け出すのを防ぐ
● 血液中の悪玉コレステロールが増えるのを抑える
● 自律神経のバランスを整える
● 女性らしい体つきを維持する
● 皮膚の潤いや弾力を保つ
● 脳細胞の機能を維持する
● 心臓や血管のトラブルを防ぐ など
一生のうちに分泌される女性ホルモンの量はティースプーン1杯!
これほどに女性の体を支える2つのホルモンは、思春期から閉経まで分泌され続けるのですが、その総量は健康な人でもなんとティースプーン1杯程度と本当に微量です。そんな希少なホルモンの分泌を乱してしまうのは、もったいないですね。
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50歳ごろを境に女性ホルモンが激減して、様々な不調を感じるのが更年期。
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監修 対馬ルリ子(つしま・るりこ)
産婦人科医師・医学博士。医療法人社団ウィメンズ・ウェルネス理事長。弘前大学医学部卒業後、東京大学医学部産科婦人科学教室入局、都立墨東病院周産期センター産婦人科医長などを経て、現在対馬ルリ子女性ライフクリニック銀座・新宿で多くの女性の診療にあたっている。2003年には女性の心と体、社会とのかかわりを総合的にとらえ生涯にわたる健康を推進するNPO法人「女性医療ネットワーク」を設立、全国約600名の医師、医療保健関係者と連携し、さまざまな啓発活動や政策提言を行っている。