桃子さんのモノローグを中心に物語は進み、ふと気づく。夫の死を喜んでいる自分がいる、と。
「その感情はある種タブーで、認めちゃいけないって自分に枷をかけている人も多い。でも、私ね、夫の死の悲しみに暮れてしばらくした後、この時間でも夕飯を作らなくていい、いつでも本を読める、24時間自分のために使っていいんだって解放感がありました。家族の”副班長”の務めを終えて、誰のためでもない私の人生を生き直すんだって思うことは、決して悪いことじゃないはずです」
そして桃子さんは、自分と対話しながら孤独と向き合っていく。
「今は”ぼっち”なんて言われますけど、一人になる時間はとても大事だし、きっと桃子さんは、自分の中にいろんなものを見つけるのが本当に楽しいんです。それをなんとか肯定してあげたかった。それと、夫のいる世界、目に見えない非合理な世界を求めたい、という宗教性の気づきみたいなものも描きたかったんです」