お気に入りの台所道具を長持ちさせる手入れのポイント。
撮影:三東サイ 編集、文 ・ 斎藤理子
「台所道具は、使うのが一番の手入れなんです」と日野明子さん。使い込んでいくことで、道具に質感や味わいが生まれ、手にもしっくりと馴染んでくる。そうしてだんだんと、一生ものの自分の道具になると日野さんは言う。
「道具作りのプロたちの多くは、新品同様に常にピカピカにしておくことが正しいお手入れではないんだよ、と言います。長持ちさせるために、押さえるべきポイントはしっかりと押さえて手入れをし、風合いが変化していくのを楽しむ。道具とのそんな付き合い方をしていると、使い込むということの楽しさがわかってくるのではないかと思います」
使い終わったら無意識に洗って食器かごに置く包丁やまな板、鍋やざる。なんとなく洗っていることが、道具の寿命を縮めているとしたら? お気に入りの道具をより長く使うために、日野さんに正しいお手入れのポイントを教えてもらった。
[まな板]周囲もしっかり洗うのを忘れずに。
まず、調理前には必ず水で濡らす。水の膜ができて汚れが染み込みにくくなるため、と日野さん。お手入れは調理の前から始まっている。
「まな板に中性洗剤はNG。泡がたくさん立つため、きちんと洗える前にきれいになった気がしてしまうからです。粉のクレンザーとタワシで洗ってください。横の木口を洗い忘れるとカビの原因になります」
1.使う前には表面を水で濡らす。汚れや臭いがつきにくくなる。
2.使用後は粉のクレンザーをまな板にふり、タワシで洗う
3.木口(まな板の周囲)も忘れず、念入りに洗う。
4.縦(木の導管の方向)にして干す。まな板立てもおすすめ。
[包丁]刃の付け根もきれいに洗ってしっかり乾燥。
「ステンレス包丁は研がなくていいと思っている人が多いのですが、これは間違い。定期的に砥石で研げば、鋭い切れ味がいつまでも続きます」。ステンレスとはいえ錆が出ることもあるので、洗ったら布巾で拭きしっかりと水気を取る。ポイントは刃と柄の境目。ここをきちんと洗って拭かないと錆の原因になる。鋼の包丁なら1週間に1回は研ぎたい。
1.包丁は砥石で研ぐのが一番。一定の角度で研ぐための補助器もある。
2.洗うときは、中性洗剤とスポンジで。刃の付け根も念入りに洗う。
3.布巾で拭き水気をしっかりと取る。特に刃の付け根は念入りに。
[アルミ鍋]手入れが簡単なアルミも重曹はNG!
汚れにくく錆も出にくいアルミ鍋。特別なお手入れも必要ないので、気軽に使えるのが利点。ただし、重曹を入れると真っ黒になるのでご注意を。「何でもきれいになるイメージの重曹ですが、アルミはアルカリ性に反応して〝黒変化〞を起こします。人体に影響はないですが、見た目は確実に悪くなるのでアルミ鍋に重曹はNGと憶えておきたいですね」
1.使い終わったら、中性洗剤を含ませたスポンジで隅々までよく洗う。
2.水かぬるま湯でよくすすぎ、布巾で拭いてしっかりと水気を取る。
『クロワッサン』937号より
●日野明子さん クラフトバイヤー/百貨店やショップと作り手をつなぐ問屋業を中心に手仕事関連の展示・企画も手がける。著書に『台所道具を一生ものにする手入れ術』(誠文堂新光社)など。